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と早霜も怖いし大井も怖い。この鎮守府に在って数少ない軍属の気分を多いにもつ艦娘の一人である野分も、乙女であるため怖いものは意外と多いのだ。偶々同僚が怖いだけで野分は悪くないのだが。
「那珂ちゃんは怖いよ?」
「……そう、かしら?」
不可思議の余り素を出した野分を、時雨は気付かぬ振りで続けた。そこを突けば野分がまた硬い顔に戻ってしまうと思ったからだ。
「那珂ちゃんは、色んな水雷戦隊に顔を出すよね」
「……それが、第四水雷戦隊の任務ですから」
各水雷戦隊のサポート。いわば雑用だ。手が足りない時、病欠が出た時、様々な理由で第四水雷戦隊は那珂を先頭にして動く。任務は常に急で、彼女達はいつだって慌しく動くはめになる。
準備をする暇があるのは稀だ。
「いつだって急に動くのに、指揮権だって渡されるのに、那珂ちゃんはいつだって失敗しない」
「……そう、ですね」
野分は、過日自身も共にした那珂の戦場を脳裏に描いた。
一水戦の護衛も那珂は確りとこなした。二水戦の電撃戦も、神通病欠の為急遽指揮権を渡されたにも関わらず無難にこなした。三水戦の航路確保とその途中での遭遇戦も、帰りの撤退戦も手堅くやりきった。どれもこれも、それぞれの旗艦やエキスパートには及ばないが、那珂は任務をやりきったのだ。自身が中破になろうと、如何にぼろぼろになろうと、笑顔のままで。
時雨は、それを怖いと称えたのだろうか、と野分は思い隣の時雨を見た。時雨の顔は羨望の色に染まりつつあった。何ゆえか、と野分が提督たちへ目を移すとそこには先ほどと変わらぬ景色が在るだけだ。ただ、何故かまた野分の胸が小さくうずいた。
野分はまだ、心が幼いのだ。
提督と別れ、二人はまた廊下を歩き出していた。那珂は体でリズムを取りつつ鼻歌交じりで、後ろを歩く野分は軍属らしい確りとした足取りだ。その野分が、前を歩く那珂に声をかけた。
「那珂さん」
「もー、さん、じゃないよー。ノワッチって呼び方固定して広めちゃうよー?」
「やめてください」
「野分はわがままなんだからー」
それでも、野分の声に足を止め振り返る那珂は部下思いなのだろう。那珂は首をかしげて野分の言葉を待っていた。
「那珂さんは、このままで良いんですか?」
「……四水戦のお仕事ってこと?」
「そうです」
聡い那珂は野分の言わんとする事を察し、野分はそれを肯定と頷いた。那珂はなんでも出来るのだ。であれば、指揮権を由良に移して他の水雷戦隊へ移籍するという選択肢もある筈だ。
野分には、那珂が水雷戦隊旗艦という立場にこだわっている様にも見えない。いや、拘っていればこんな雑用水雷戦隊など蹴っていた筈だとさえ思った。
「うーん……那
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