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執務室の新人提督
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う旧海軍時代にはなかった士官学校の学科の中に居た自身の年上の同期、隣の鎮守府の提督のデータだ。
 年数人、一人も居ない時も珍しくない科であるため、実情は主計や砲術、参謀等に混じって特別扱いされるのが提督科の士官候補生だ。将来恵まれたスタートを踏み出せる彼らを、嫉妬の眼差しで見る人間は当然多い。それによって貴重な提督と言う存在が軍部から去らぬよう、また教官達――いや、士官学校は特別扱いするのだから、その嫉妬はより一層強まる。
 そんな中で共に過ごした同期と言うのは、なかなかに記憶から拭えない物である筈なのだが、面白いことに少年提督は隣の鎮守府の提督のことなど、当初すっかり忘れてしまっていた。
 
 大淀のまとめた書類のデータを脳裏に描く。流し見た程度でも、今しがた読み取った情報は鮮明だ。
 普通の家庭に生まれ、まったく普通に育ち、偶然提督の素質を持っていた。転がり込むようにして入った士官学校での成績は中の下、素行はまったくの普通、教官達の所感は、居るのか居ないのか分からないほど存在感がなかったという事。提督としてのデータは、丙。最低ランクだ。
 次に記されていたのは、この世界での提督の特殊相性である。駆逐艦娘、初春型。
 それだけだ。
 
 通常、特殊相性が駆逐艦娘にある提督は他の鎮守府や警備府の支援役や、遠征を担うことになる。火力不足は否めないからだ。その中でも、特に少年提督の友人である提督は運が無かった。
 駆逐艦娘、しかもその中でも初春型にしか彼の持つ提督としての相性は発揮されないのだ。
 初春型という駆逐艦娘は決して恵まれた性能を持っていない。睦月型の様な燃費のよさも、陽炎型や夕雲型の様な優れた性能も持ち合わせていない。おまけにたった四人しか現在も確認されていない上に、もし増えたとしても二人増えてたったの六人だ。全てで一歩劣る艦娘である。
 
 だが、蓋を開けてみればどうだ。
 彼は同期の提督どころか、既に何年も深海棲艦達と戦ってきた先輩提督達となんら遜色の無い、いや、明らかに彼ら以上の戦果をあげている。
 そこまで考えて少年提督は驚愕したが、何故か徐々に脳と心は冷え、次第にそれを、あぁそんなものか、と受け入れていた。無理やり何か――この世界その物に抑え込まれたという事実に気付くことも無く、少年提督は息を吐いた。
 
 彼の吐いた息を落胆のそれと感じ取ったのか。大淀は肩を僅かに震わせて俯いた。少年提督は大淀の肩を撫でた。自身より高いところにある肩に少々羨望を覚えて、であるが。
 
「僕とあの人は、生まれもあり方も違うだろうけれど、これは必要な事だったと僕は思うよ。人間は似通った人間の中で、違った人間を偶に求める物だって父さんも言ってた。人として何かを得る為だって……多分、これはそういう事なんだ。だからもう、大淀。あ
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