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いるので、現状は確りと維持されている。提督の平穏は若干置き去り気味だが。
が、それでも徐々に変化はある。
「あぁでも、今日は夕立さんとか文月さんにもハグされたなぁ」
「そりゃーねぇー」
頼れる古参の姉貴分がやるのなら、自分も、という事だ。これは龍驤の真似ではない。ただ彼女たちにとってすべき事を龍驤に教えられただけである。
「一応二人にも、さっき秋雲さんに言った事と同じ事を言ったけど、あれは伝わってないなぁ」
提督は当時の二人を思い出しながら零した。二人とも首をひねって疑問符を頭の上に浮かべていた。言葉を理解していないというより、その行為の何が駄目なのか分かっていないような様子であった。それはそうだろう。彼女達もまた、安易に抱きついたわけではないのだから、提督の言葉を理解できるはずも無い。提督もまた彼女達のそういった部分を理解できていないのだから、なんとも悲しいすれ違いである。
「あぁ、ビギナーズラックなんてないもんだ」
「おや、坊主でフィニッシュー?」
「残念ながらねぇー」
提督は垂らしていた釣り糸を巻き戻し、肩をすくめた。そのまま、前を見たまま彼は続けた。
「ありがとうね、秋雲さん」
「うん?」
首を傾げる秋雲に、提督は顔だけ振り返って笑った。
「来たときは寒かったけど、今は暖かいよ」
「……うん、秋雲も今は暖かいよー」
秋雲は提督をまた強く抱きしめた。提督がそう思っているのなら、今はそれでもいいか、と思いながら。
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