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執務室の新人提督
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「……あぁ、仲間チート系か……いや、組織チート系?」
「それそれ」

 提督当人の身体や能力になんら特典もないが、彼の艦娘達とこの鎮守府がそれを補って余りある状態でこの世界に在るのだ。提督は十分に恵まれている。少なくとも、彼はそれ以上求めるつもりは無い。あと彼が欲しい物と言えば、平穏くらいだろう。
 何せ宴会を開けば初手轟沈、次檻で見世物である。しかもどちらも彼にとってのチート部分である艦娘によってなされた行為である。実に駄目な特典である。
 
「なるほどなー。でも提督あんまそーゆーの言わないよねー? それ皆にも伝えてあげたら喜ぶと思うけども?」
「その結果金剛さんにまた轟沈されろと言うのか」
「あっ」

 察した秋雲はそれ以上何も言わず顔を背けた。勿論提督には見えていないが、なんとなく分かるものである。彼は肩を落とした。この鎮守府に所属する艦娘は、提督に対して少々……いや、かなり感情的だ。悪い方にはあまり向かわないが、嬉しいことがあると直ぐ行動に移す傾向にあるのは確かである。駆逐艦娘や金剛等はその筆頭であると言っていいだろう。
 提督からすればそれで一応納得しているが、艦娘達からすればその程度ではない。今になってやっと触れ合えるのだ。今はまだそれで満足しているだけである。今はまだ。
 
「あぁもう、君達も女性なのだから、安易に異性に触れていいものじゃあないと僕は思うんだけれどもねー……」
「現状」
「うん、秋雲さんにものっそい抱きつかれてますけどね?」

 事実である。提督が口にした内容と、現状は大きな隔たりがある。異性に安易に触れるなと提督は言うが、今の提督は秋雲に後ろから抱きつかれたままだ。
 秋雲からすれば安易ではないのだから、何を言われても離すつもりはないのであるが。
 
「そういやー、今日も龍驤さんにハグされまくったの?」
「おうともさ」

 何故か胸を張る提督に、秋雲はまたも個性的な笑い声を上げて返した。龍驤という軽空母娘も秋雲同様、いやそれ以上に提督と相性のいい艦娘である。秋雲にとっては本当に頭の上がらない先任であり頼れる姉貴分である。そんな龍驤が、いつ頃からか提督に対してのスキンシップが目立つようになってきた。廊下ですれ違えば抱きつき、食堂で座っている提督の頭を撫で、出撃前の顔見せではハグ、である。
 
 秋雲や龍驤のような相性の良い艦娘との触れ合いは、提督にとってもある意味で癒しだ。一人違う場所に来てしまった彼にとって、艦娘は温もりであり癒しでもあった。無償で愛した存在達からの暖かさだ。そこに安心感を感じられないほど提督は冷たい人間ではない。
 相対的に度々見かけられる山城の藁人形と五寸釘が似合いそうな姿も現在の鎮守府にはあるわけだが、結局それのケアも夜の執務室のホラー鑑賞等で行われて
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