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の言い分はもっともだ。秋雲がここに居る事が意外と言うのなら、提督がここに居ることも同様、意外である。提督に会いたければ執務室へ行け、と言われるほど普段から出歩かない提督が港にいるのである。提督は苦笑を浮かべて鼻の頭をかいた。
「僕はちょいと時間に余裕が出来てねぇ、暇つぶしだよ」
「ほほー」
「似合わないっていうのは分かっているから、言わないでいい」
「まぁ似合わないよねー」
にゅふふふ、と独特な笑い声を上げて秋雲は提督の肩をぺしぺしと叩いた。実に楽しげな様子であるが提督からは秋雲のそんな調子も見えてはいない。ただ、なんとなくそうなのだろうとは彼も理解できていた。この辺りもこの二人の相性の良さだろう。
「でもまぁ、そんな似合わない事してたから秋雲に出会えたでしょー? 嬉しい、ねぇ嬉しい?」
どこか妹――いや、清霜は彼女にとってはこの世界での正式な型的には妹ではないのだが、それに近い存在の真似を再びやりつつ提督に問うた。首の傾げ具合まで真似たものであるが、流石にそれは提督には気付けなかった。
「うれしいなー」
「やだこの蒼龍さん飛行甲板全然ない」
「そらあらへんがな」
平たい男の胸を平然とまさぐる秋雲に提督は呆れ顔で返しつつ、流石に少女としてどうだと思い軽く頭をはたいた。
「あいた。なーにーさー。提督がネタ振ったから、秋雲もネタで返しただけだぜーい? 何、放置プレイの方が提督よかったりしたの? よかったりしちゃったのー?」
「放置プレイ言うなし」
「ですしおすし」
まったく返事になっていない返事を口にして秋雲はまた独特な笑い声を上げた。秋雲は実に楽しそうである。
「んで、秋雲さんは、なしてこんなとこに?」
「あぁ、んん、秋雲さん新作開始。でもちょーっとネタに詰まって散歩中。んで、偶々提督見つけて抱きついた。今ここ」
「さいですか」
「ういあ」
またも返事になっていない返事を口した秋雲に提督は突っ込まなかった。彼はゆっくりと海面を漂う浮きを見つめ、秋雲も提督に合わせてそれを眺めていた。
暫し静かな時間を過ごして、秋雲は提督の耳の傍で囁いた。
「世界は違っても、空と海は同じだねー……」
どこか哀愁を感じさせる秋雲の言葉に、提督は何も言わず、頷きさえしなかった。簡単に同意するには秋雲の囁きは提督にとって重すぎた。提督の見る空と海は青だが、秋雲のそれは多分違うからだ。炎に焼かれた夕焼けの様な空で、オイルと鉄くずで侵されたどす黒い海で、それが秋雲の双眸を塗りつぶしているとするなら、提督にはもう何も言えることは無い。ただの凡人提督に理解できる世界ではないのだから。
「今度のヒロイン、青と白の縞パンでいいかなぁー」
「そうかそうか、つまり君はそうい
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