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執務室の新人提督
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か気になる事でも?」
「あぁいや……昔随分遊んだなぁーって思って」
「そ、そうなんですか……? 初霜から借りた物なんですけれど……これは昔ので?」
「いやいや、過去作は随分遊んでたんだけど、これはまだやってないんだよねぇー……こっちにもあったんだなぁ、これも」

 懐かしそうに目を細めて呟く提督に、山城は困惑顔だ。山城にゲームの良し悪しは分からない。ゆえに、彼の懐かしそうな顔にも何も共感できないのである。
 ちなみに、山城は初霜から借りた、と言ったが実際には子日経由である。最近の子日は雪山山荘遭難ゲーで悪い方にバタフライエフェクトする事に必死で、このゲームの貸し出しを許可したのだ。
 
「んじゃ、始めますかー」
「おー」
「お、おー……?」

 ちょいテンション高めの提督と、それに合わせる龍驤に引っ張られて山城も声を上げたが、どう見ても無理をしている感は拭えていなかった。
 
「えーっと、一応ナイトメアいっとくか」
「なんやのんそれ?」
「一番難しい難易度」
「大丈夫なんか、それ? 一応初めてなんやろう?」
「んー……正直もうこのゲームはシステム的には行き詰ってるから、ナイトメアが丁度いいんだよねぇ……あとはまぁ……グラフィック楽しむゲームというか、ちょっとグロ怖い耽美な世界にふけるゲームって言うか」
「ほー」

 提督の説明も、龍驤と山城にはさっぱりだ。ただ、それでも話しかけたり返事をする龍驤に比べて、山城はもうこの時点で口数が減ってきていた。ホラーであるがゆえに、やはり緊張してしまうのだろう。
 
 設定が終わってゲームが始まるなり、山城は提督の腕に自身の腕を絡めた。提督はそれに何を言わない。すでに予定調和だ。来るたびに、ホラーを見るたびになされた行為である。多少は慣れてきたのだろう。ただ、それを端で見ていた龍驤は、なるほどなぁー、と小さく呟いて頷いていた。

「……これ、ゲーム、ですよね?」
「そうそう、これで驚いていたら、最新ゲーム機のゲームなんて、もっと吃驚しますよー?」
「はー……えらいこっちゃでー」

 見慣れぬ二人はOPらしきところで既に感心しきりだ。ただ龍驤は暫ししてから、にやりと笑った。
 
「こんな映像で、ホラーなんやろう?」
「そうそう、そこだけはまぁ、期待していいよ」
「ひ……」

 山城は身を強張らせて一層提督に強くしがみ付いた。その様子に、提督と龍驤は顔を見合わせて同時に肩をすくめた。
 
 そして三人は画面に視線をやり――
 
「山城ぉ、自分が持って来たモンやで? 当人がゲーム画面見てないってどうやねんな」
「でも……だめ、やっぱり無理、怖いもの……」
「……んー? 怖いか、これ?」

 冒頭の場面である。
 龍驤は困惑した相で提督を見た。
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