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「宴会……ですか?」
「はい、宴会です」
すっかり愛用、というか提督とセット扱いになっている執務机で書類を眺めていた提督は、眼前にいる大淀へ目を移した。
大淀は眼鏡のフレームを少し調整しながら頷いた。ただ、提督も大淀も、更には秘書艦用の机に座わる初霜の表情も、皆一様に暗い。
なにせ前回の宴会が酷すぎた。開始早々、宴会の主役である提督離脱で始まる、いじめかな? と思えてしまうような宴会であったのだ。
渋い顔をする提督と初霜に、大淀は胸を叩いて声を上げた。
「ご安心ください、前回から学びました。この大淀、同じミスは致しません」
自信満々、と全身で語る大淀を見てから、提督は初霜を見た。
初霜はただ提督と大淀を見つめるだけだ。決定権は提督にあるのだから。
提督はゆっくりとうなずいて肩をすくめた。
「分かった、じゃあやろうか」
提督のその言葉で宴会は決まった。
第一水雷戦隊、そして第二水雷戦隊の精鋭達が鋭いまなざしで周囲を見回していた。神通、阿武隈に率いられた駆逐艦娘達の視界にあるのは、間宮食堂とこの鎮守府に所属する艦娘達だ。いつぞやの様にテーブルの配置は変えられ、椅子は別の部屋に運ばれている。広い食堂であっても、流石に一堂に会するとなれば手狭だ。
親友同士、友人達、姉妹達で各々あつまったテーブルに、少し開けた場所に一水戦、二水戦の精鋭が並び立っていた。この場にいないのは、提督と大淀と初霜だけである。
さて、いつになれば宴会の主役がやってくるのだろうかと待っていた艦娘達は、ふと入り口の扉を同時に見た。扉の向こうからゴロゴロと音が鳴り出したからだ。補填された道の上で、強化プラスチックタイヤが回る音だ。さて、これはなんだと隣の友人、姉妹達と顔を見合わせようとしていた艦娘達は、しかしその正体をしって言葉を失った。
小さな人影、初霜が扉をあけ、次いで台車が食堂に入ってくる。圧しているのは大淀だ。
そして――
台車の上に置かれた檻の中で、提督が正座していた。
誰も何も発しない。息さえ忘れて彼女達はその奇矯な物体と大淀達を凝視していた。食堂で存在を主張するのは台車の車輪の音と提督が口ずさむドナドナだけであった。
台車を押す大淀と、それを先導する初霜。彼女達は一水戦と二水戦のメンバーの間で止まり、周囲を見回した。配置は、殆ど前の宴会と同じだ。間宮食堂の開かれたカウンター席前で鎮守府の主である提督が佇む。ただ違うのは、その背後にこの日の為にと選ばれた精鋭達――提督の盾と矛が並びそろい、何故か檻に入って正座をしている死んだ目の提督が居ることだろう。
流石にそれはどうか、と思ったのだろう。長門が声を上げた。
「大淀、提督のその姿は
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