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執務室の新人提督
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「僕だって司令官と一緒にご飯食べたいのに、ずるいよ」
「仕方ないでしょ。これでもまだ穏便……かどうかは知らないけれど、マシではあるんだから」

 応える霞も、言葉ほどに納得していないのだろう。その相はどこか不満げだ。目の前にある手羽先を骨ごと噛み砕かんと口に運ぶ彼女の姿は、実に未練たらたらである。
 出来うるなら霞も提督に餌付けしたいのだろう。餌付けして手懐けてしまいたいが、彼女には今までで作り上げた人物像があるし、そういう事を堂々と出来る性格ではないのだ。
 気難しい乙女なのである。
 
「んんー……初霜だって僕と同じでしょ?」

 未練がありながらも動かない霞から目を離し、皐月は次に同じテーブルに居る初霜を見た。初霜はコップを満たすオレンジジュースで喉を潤していた最中だったが、コップから口を離して微笑んだ。
 
「そうですね」
「だよね、だよね!」

 初霜の同意に、わが意を得たりと皐月は力強く頷いた。
 
「あのまま部屋に持ち帰ってしまいたいですよね」
「ううん、そうじゃないよ初霜」

 うっとりと檻の中の提督を見つめる初霜の発言に、皐月は力強く首を横に振った。
 初霜の手に在るコップにはアルコールが含まれている物で満たされているのだと信じて、皐月は同じテーブルに居る最後の一人、雪風に言を向けた。
 
「雪風だって」
「はい! 雪風も首輪とかつけて持ち帰りたいです!」
「ううん、もういいや」

 天真爛漫な笑みで大分駄目なことを口走った雪風を放置して皐月は額を押さえた。今テーブルに集まる皐月を含めた四人、駆逐艦娘のトップエース達がこれである。霞はまだマシにしても、他の二人はもうなんかちょっと駄目であった。
 
「提督が幸せなら、私はそれでいいの……苦しみのない世界で、檻の中で私たちがずっとお守りできるなら、それもきっと提督の為になると思うの」
「ですよね! 雪風もそう思います! もうあのまま駆逐艦娘寮に運んで用意しておいた地下室に招いたらいいと思います!」
 初霜と雪風の物騒な会話に皐月は頭痛を覚えつつも、いつの間にか地下室なるものを用意していたという事に驚愕していた。

「……どんな地下室を用意したってのさ?」

 皐月の半眼、じと目に晒された二人は同時に首をかしげた。何故そんな目で見られるのか不思議なのだろう。ただ、律儀な二人はしっかりと皐月の言葉に応じた。

「何かあっても大丈夫なようにと、第一水雷戦隊と第二水雷戦隊合同で作った地下室です」
「そうです! 雪風達が保存食や水とかを用意して、十年くらいはなんとかなるようにしておきました!」

 やだ怖い、そんなことを胸中で零しながら皐月は頭を抱えた。初霜と雪風にアルコールが入っていることを切に願ったが、願ったところで
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