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執務室の新人提督
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かせあれ、です」

 提督を檻に突っ込んで台車で運んできた元任務娘さんはドヤ顔で言った。前述に不安になる要素しかないあたり、この艦娘も実にこの鎮守府に相応しい人材である。
 彼女は長い箸、菜箸らしきものをどこからか取り出し皆に見せた。
 
「では、実演を」

 と言うや、大淀はテーブルにあった皿を一つとり、綺麗に切り分けて盛られていたドネルケバブを一つ摘んで檻の間からそれを提督の口元に運んだ。ちなみにその間も提督はドナドナ〜鷹の団黄金期編〜を歌い語り一部艦娘達の瞳をキラキラさせていた。
 
「ていとくー、あーんですよー」

 幼い子供に言い聞かせるような大淀の調子に、提督は素直に口をあけて箸に摘まれていたドネルケバブを食べた。もぐもぐと口を動かす提督を幸せそうな相で大淀は眺め、
 
「おいしいですかー?」
「ヌラーヴィッツァ」
「ハラショー」

 幼児向けの言動であやす大淀に、提督は何故かロシア語で返した。どうでもいいが最後のは一水戦として前に並んでいる、意外と提督の歌に夢中になっていた響ことヴェールヌイだ。ちなみに、ヌラーヴィッツァとはロシア語で、いいね、の意味である。
 大淀はテーブルにドネルケバブの盛られた皿を戻し咳を払った。
 
「このようにして、提督に食べていただこうかと思います。と言いますか誰ですか中東の肉料理を作ったのは」
「あ、それ私のです」

 手を上げたのは瑞鳳であった。
 
「あぁ、瑞鳳さ――瑞鳳さん!?」

 大淀は綺麗な二度見をかまして玉子焼き製造機を凝視した。いや、大淀だけではない、大半の艦娘は瑞鳳を凝視した。
 
「あの……偶には提督にも、違う料理を食べてもらいたいかなー……って」

 てへ、と笑う姿は愛らしい。そこから中東料理を宴会で平然と出してくる豪胆さは見えてこないが、彼女もまた戦う艦娘の一人であったという証左なのだろう。どうでもいい証左であるが。
 ちなみに提督と吹雪とヴェールヌイはこの間ロシア語で近況を語り合っていた。
 
 そしてぐだぐだのまま宴会は始まったのである。
 
 
 
 
 
 
 
 
「提督、こちらどうぞ」
「司令官、こっちも美味しいわよ!」

 何故か提督が恐れる雷、鳳翔のコンビに餌付けされている檻の中で正座している男――提督を見ながら、皐月は肩を落とした。鳳翔と雷以外にも、順番待ちで檻の周囲に待機している艦娘は多い。
 古鷹、夕雲、瑞穂、千歳、電、金剛、榛名、霧島等が待機済みだ。
 皐月の視線のさきでは提督が、あー駄目になるんじゃー、等といいながらも確りと差し出された物を口にしている姿がある。
 前に比べればましであるが、それでもやはり不満がない訳ではない。皐月は頬を膨らませて隣に居る霞に言った。

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