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顔でうんうんと頷いた。そんな二人をみながら、江風は居心地の悪さを感じていた。時雨と瑞穂に挟まれている上に、話題が先ほどまで口にしていた提督の事だからだ。
「あぁそうそう江風」
「……なンだよ、時雨姉貴」
ばつの悪さからか、胡坐のまま頬杖をついて少々反抗的な口調で江風は返した。そんな江風を暖かいまなざしでみつめて、時雨は肩をすくめた。勿論、提督の真似である。
「おめでとう」
「……はぁ?」
「明日江風を第一艦隊の旗艦において海上作戦を展開するってさ?」
「……」
時雨のその言葉に、江風は目を何度も瞬かせた。次いで、自身の頬を抓り結構な勢いで頭部を叩いた。当然、自身の、だ。
「っつてぇええええええええええーーーー!」
「いや、何をしているんだよ、江風?」
「時雨の姉貴、時雨の姉貴! それ本当か!?」
目じりに涙をためたまま、椅子から突如立ち上がり江風は時雨の肩を掴んだ。もうこのまま時雨を抱きしめてしまいそうなテンションである。
「嘘じゃないよな!? マジだよな!?」
「本当だよ。執務室にいた提督が、僕の前で初霜と大淀に言ってたから、確定だし、僕がこうして報告役任されたんだから、信じなよ、っていうか江風痛い」
時雨の言葉の途中から、江風は時雨を抱きしめていた。ぶるぶると震えながらだ。
この鎮守府において、第一艦隊の編成に組み込まれる事は珍しい事ではない。周囲はベテラン達で、提督からしても安心して新人を任せられるからだ。
ただし、旗艦となればまた違ってくる。第一旗艦山城がその座を引くのは、限定海域で戦艦をだせない時や、初霜が指揮を任された時、そして一部の艦娘が任された時だけだ。
この鎮守府に配属になって日の浅い江風でも知っている。いや、江風だからこそしっている。高い錬度の艦娘が多いこの鎮守府の情報通、青葉に話を聞いていたからだ。強くなるための努力を厭わないのは、彼女の長所である。当然、その話の中でそれぞれの武勇伝に近い物も耳にした。
その中で、江風にとって二番目に興味を惹いたのはある話だった。
かつての旗艦経験艦娘達の話だ。吹雪、初霜、時雨、初雪、綾波、浜風、神通、矢矧、球磨、大井、北上、青葉、妙高、高雄、利根、鈴谷、摩耶、足柄、羽黒、金剛、比叡、扶桑、伊勢、大和、赤城、加賀、鳳翔――と、他にもまだ居るが江風の知る限り第一旗艦を務めた艦娘は、皆この鎮守府で一廉の艦娘である。
その中に自身が入ったのだ。その喜びは一入だ。
ちなみに、一番彼女の興味を惹いた話と言えば――
「あの提督、本当に見る目があるンじゃねぇか!」
「……見る目、ですか?」
子供の様に喜ぶ妹をあやす時雨に、瑞穂は首を傾げた。瑞穂は知らない話であるから、不思議に思うのは仕
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