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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
本当に賢いヤツらの生き方
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とすれば決断と実行をやめてしまえば済むのだが、それは「人の生き方」すら諦める話になる。

 そうして一人のイラストレーター『天河みすず』として周囲の大人と同様に努力を積んで決断と実行を繰り返してきた珠希から見て、今の星河は既に決断していて、あと足りないものは実行に向けて背中を押してくれる人だと感じた。

「じゃあ星河くんは今、自分が何をしたいのか、何をすべきなのかわかったんじゃない?」
「えっ?」
「不安に思ってるだけ(・・)じゃ何も変わらないよ? そういう場合、むしろ本人が思ってる以上に状況は悪化してるんだから」
「そう……だね」
「そうだよ。やりたいようにやりなよ。何も無理に前向きになろうとする必要はないから。ぶっちゃけ、人間は前向いたまま横にも後ろにも進めるんだし」
「すげー屁理屈だな」
「外野は黙っててねー?」
「へいへい」
「――ってわけで、ここから先は星河くんの人生だよ。あたしは……ううん、昴くんもきっと最後まで責任は取らない。でも応援はするし、必要とあればいつだって手を貸すよ。それが星河くんのよく考えた末の決断ならね」

 友人であれどあくまで他人。星河個人の意思と決断を尊重し、同時に自らが他人の人生に過干渉しないためにも、珠希はすすんで責任を取らないと言い放つ。あくまで手を貸すし、助言くらいは与える余地を残して。


 しかしそんな人生論を――途中、外野に口を挟まれたが――説きながらも、実際は今の今までの珠希は他人から見て努力らしい努力をしてきていない。
 家事はいずれ誰かがしなければいけないことだったし、仕事がある父や兄に任せっきりになるのは弟と妹を抱える姉としては見過ごせない事態だった。絵を描くのも昔から好きだったし、それに色を塗るフォトシ○ップ(ツール)を与えられてからは父の同僚らからも助言を受け、瞬く間にグラフィックの知識と技術を吸収したものの、ちゃっかりゲーム制作に参加させられていた。まさかそれがergだったとは当時はちっとも知らなかったが。
 その後に訪れた一般向けゲーム『シンクロ』制作時の修羅場もあれは当の珠希が浮き足と勇み足で自分から勝手にドツボにハマりこんだ結果であり、自業自得と言えばそれはそれで済んでしまう。

 そして、そんな珠希の裏事情などつゆ知らない星河は、たとえ不安になってもその不安を根源ごとぶち壊せてしまう少女の言葉を真に受けて奮起し始めた。

「……うん。わかった。わかったよ珠希さん」
「ならいいんだけど」
「うん。確かに不安になってるだけじゃダメだよねっ」
「うんうんっ。そのとおり」

 言葉の真意が伝わったのかはわからないが、次第に背筋が伸び、語気も力強さを増してきた星河を見て、もしかしたらあたしは他人のテンションを上げるのが得意かもしれないと考え
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