第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
本当に賢いヤツらの生き方
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優オタの兄の妹は妹で兄以上の性能を持っているのだが、それをカミングアウトする予定は今のところ、ない。
……まあ、仮にMITに合格して卒業できたからといって、ブラック企業を避けるがあまりホワイトを通り越してニートになるのも珍しくないというのだから、本気で人生はどう転ぶかわかったもんじゃない。大学や専門学校はニート育成準備の機関じゃないのに。
「まあ何にしてもさ、まだあたしも星河くんも高1じゃん。よほどのことをしない限りはまだ軌道修正とリスタートはいくらでもできるんだからさ、何も気負うことないって」
「こればかりは竜門の言うとおりだな。俺の親父も30近くまでなら人生も修正できるって言ってたしよ」
「う、うん……」
「まだ不安?」
「そういうわけじゃあ……ない、と思うんだけど」
「うーん。これはなかなかしぶといなぁ」
すれ違う人とぶつからずに器用に歩きながら、はっきりと否定も肯定もしない星河の目を覗き込んでいた珠希は、口元に手を当てて考え込む仕草を見せる。
しかし、その仕草さえ他人を惹きつける魅力を持つ少女は大多数の前では余計な自己主張をせずにその場を円滑に動かす歯車になり、必要とあれば先の体育の授業のように誰もが驚くことをあっさりやってのける。むしろ何かに対してネガティブに捉える要素がない。
それは昴も同じで、普段の自己主張は抑えつつも、必要な時は誰よりも先陣を切って動くタイプだ。誰かからやれと言われれば何でもできてしまうような人が、何を後ろ向きに考えることがあるのだろうか。
そんな二人がすぐそばにいればかえって萎縮してしまうのも無理はない。が、不意に足を止めた珠希は星河のほうに振り返り、口を開いた。
「星河くん。さっきも言ったけど、人生に本当に必要なのは生きることだよ。死んだら何もかもそこで終わりなんだから」
「う、うん」
「本当に逃げちゃいけないときを見誤らなければ、最低限、人生は何とかなるよ。もちろん、いい人生を歩みたいなら努力と決断と実行は嫌というほどしなきゃいけないけどさ」
「そうだね……」
両親や兄の背中だけではなく、イラストレーター『天河みすず』の名を背負ってここまで歩んできた珠希が見てきた人の生き方というものは常に決断と実行の繰り返しだった。
誰もが遠くに見える目標のために、足元に散らばる今できること、今なすべきことを拾い集め、そこからひとつでもできるだけ多くのものを習得しながらゴールに辿りつく。けれどそれはまた別の目標へのスタート地点で、以下同じことをひたすら繰り返し、終わりのない真の終着地点を目指して歩んでいた。
当然、楽なことなど何もない。どこかに山があり、谷があり、行く手を阻むように激流が横たわっている。それらを避けよう
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