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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
本当に賢いヤツらの生き方
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がまともなアイデアを出さないせいでどうやっても振出しに戻ってしまいながら、ついに三人の帰路が別れる駅の手前の交差点まで来てしまった。

 横断歩道を渡った先に見える階段を上り、駅や駅の北側に位置する周辺のビルと繋がるペデストリアンデッキを抜けたところで、そのまま駅の連絡通路を通り抜けて家のある南口へ向かう珠希と、改札を抜けて電車に乗る星河と昴に別れる流れになる。

「――ったく、てめえは本気で頭の使い方を知らないのかよ」
「テスト勉強よりも本当に大事なことを知ってるからね。しょうがないね」
「大事なこと? 何それ?」

 ここまで来ると、夕方近くということもあって三人の周囲の人波もかなり多くなり、耳に障る雑音も増えてきたが、珠希が若干先頭になり、星河を挟み、そのやや後ろを昴が歩く形で人ごみをよけながら三人は歩を進めていく。

「そりゃあもちろん生きることでしょ。テストの点がいいだけで食って生きていけるならあたしのお兄ちゃんは今頃MIT卒業して林檎かCIAだよ」
「随分とでかい風呂敷広げやがったな」
「ねえねえ珠希さん。MITって何?」
「マサチューセッツ工科大学の略だけど?」
「へぇ……えっ?」

 誰しも聞いたことあるレベルではあるが、そこは熾烈な受験競争を乗り越えてきた学生たちの集まる世界の大学ランキングで1ケタになるだけの大学だ。それくらいは星河も知っている。

「言っとくけどあたしのお兄ちゃん、テストの点だけ(・・)なら海外の大学にも行けるって言われたらしいからね。英語とフランス語とスペイン語喋れるからアメリカとかヨーロッパ行っても困らないし」
「何だよそれ。お前と本当に血が繋がってんのか?」
「だよねー。できすぎだよねー。てかお兄ちゃんの語学能力はおかしいんだよ。基本理系のくせに」

 自虐気味に自らの兄・暁斗の断片的情報を口にする珠希であったが、学力だけなら海外の大学に行けたというのは紛れもない事実である。
 しかし当時既に竜門家の財布を握っていた珠希に心配をかけたくないとの心遣いから、「留学費用の問題」――という名目の下、アニメを観る暇が削られ、ゲームを取り寄せるのが面倒で、何より声優のイベントに出られないという声オタの生命線を断つわけにはいかない本音――を持ち出して専門学校から就職の道を選んでいた。

 当然、そんな本音含む内情など赤の他人に話せるわけはないだろう。内輪の恥は極力曝け出さないのがこの国の流儀である。一応立派に社会人をしている兄の、兄としての面目を保たせるための、妹なりのささやかな抵抗だ。
 なお世界的には日本のようなモノリンガルの国・地域よりもマルチリンガルのほうが多く、そこに文系・理系は関係ないことを偏見防止のために明記しておく。
 その一方で日本語含む4か国語を操る声
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