第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
本当に賢いヤツらの生き方
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…た、珠希……さん?」
「おい、てめえ何言ってやがる?」
さすがに癇に障ったか――凍りついた表情を軽く咳払いをしただけで笑顔に解凍した珠希だったが、吊り上がったその口の両端にまるでサスペンスドラマの中の黒幕にも通じる昏いものを察知した星河と昴は反射的に足を止め、後退りたい気分になった。
そんな二人を制止するかのように、珠希は後ろめたい昏さを表情から排除し、口を開く。
「まあ――とにかく、星河くん。これはあたしの考えだけどね、頭がいいってことはただそれだけにしか過ぎないんだよ。本来人が持つべき知識と知能と知性の意味は全部違うんだから、知識だけ求めたところでその人はせいぜい少し頭のいい猿にしかなれないってこと」
「そういうものかなぁ……」
「そういうものだよ。人類の歴史を見ても、ルールを生み出すのも施行するのも支配するのも人間だったし、それを破るのもまた人間でしょ? 知識があっても知能がなければちっぽけなマニュアル人間になるし、知性がなければ自分からすすんで絞首台上っていくだけなんだよ」
まるでそういう輩を目の当たりにしてきたかのような珠希の言葉に、星河も昴も反論の切り口を見いだせなかった。
そして広義には似通っている「知識」も「知能」も「知性」も、心理学においてはその意味を異にするが、星河や昴と同い年のはずの眼前の少女はそれを知ってか知らずか、ちゃんと区別してきた。
「だからあたしの思う本当に頭のいい人は『こと未だ成らず、小心翼々。こと将にならんとす、大胆不敵』を実践しようとするし、できると思うんだよね」
「え? ……えっ?」
「……竜門。お前やっぱこの学校受かっただけあるわ」
「ふふん。今さら?」
たわわにGサイズの果実が左右に実った胸を張り、再び芝居がかったような鼻につく態度を取る珠希だったが、さすがに主席レベルの学力を持つ昴でも珠希の知識量は勘に堪えた。
『――こと未だ成らず 小心翼々
こと将にならんとす 大胆不敵
こと巳になる 油断大敵』
これは勝海舟の言葉のひとつである。
「うーん。でもやっぱり僕は不安だなぁ」
「そっかぁ……。じゃあここから先はやっぱ昴くんに丸投げだね」
「待て。さっきまでの説教はなんだったんだよおい!」
「え? そもそも幼なじみってこういうときのためのものなんじゃないの?」
「嫌な記号化してんじゃねえよ」
「え? じゃあ昴くんは星河くんを見捨てるの?」
「そうとは言ってねえ。見捨てるつもりはこれっっっぽっちもねえから!」
「よかったね星河くん。これでテストは安泰だよ」
「え? あ、う、うん……」
「てめえ……っ」
結局この後、前向きなテスト対策の中身は珠希
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