第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
本当に賢いヤツらの生き方
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「あーもう、精神的にキツい」
「吐き出したいモノ吐き出せるだけまだマシだろうが」
素直に心情を吐露しながら、緩慢な動きで自分の下駄箱を開けようとする珠希に、昴は率直に返す。
「キツい」のは誰にでもある感覚だ。
男だろうと女だろうと、若かろうと老いていようと、健やかだろうと病んでいようと、無理や強制が続けば精神が、肉体がそう訴えてくる。そのキツさを感じるゲージに個人差はあるものの、脅迫的な共感や同調圧力に束縛されて内側に溜め込んでしまうよりは、まだ今の珠希のように吐き出してしまうほうがマシである。
だが今の「キツい」状況の遥か彼方にある「修羅場」を舐めざるを得なくなったことがある珠希からすれば、昴の言葉は否定して噛みつく対象ではなく、至極真っ当な言葉のひとつにすぎなかった。
同調圧力など本物の社会が与えてくるプレッシャーの前では生温い。脅迫的どころか、ほぼ脅迫紛いに「できる・できない」もしくは「やる・やらない」のどちらかしか選ばせず、否定すれば足場がなくなるだけだ。
足場がなくなれば遅かれ早かれ生きていく糧を失う。愛や友情で腹は膨れない。だが生き残るためには知恵と武器が必要で、その武器が幼い若さしかないなら知恵をつけなくてはならない。否定だけして悲劇のヒロインを演じていては意味がない。
「……まあそうかも」
「あ、ああ……」
「でも無理はしちゃダメだよ? 珠希さん」
「うん。そこは大丈夫だよ星河くん」
そこを知っているあたり、あっさりと引き下がった珠希にむしろ昴のほうが内心拍子抜けしてしまったくらいだった。
――まあ何にせよ、今は我が家に帰らなくては。
常時空腹の野球バカと面倒臭がりの干物妹と、性欲だけは有り余っている母親とたまに寝に帰ってくるような父親がいる、あの家に。
そう考えると、昴が勘違いしたほうの意味でも家に帰りたくなくなってきた珠希である。
「……あれ?」
そして靴を履きかえようと下駄箱を開けた珠希の視界に飛び込んできたのは、普段下駄箱の中にあるはずのない物体だった。
「何だろこれ?」
これ、封筒? そもそもなぜ下駄箱に?
ローファーの上に丁寧に添えるようにして置かれていたそれを手に取り、そもそも自分の下駄箱にこんなものを入れた覚えがなかった珠希は首を傾げる。
「手紙? 珍しいねこんなところに」
「それラブレターなんじゃね? 古典的なケースだと」
「へえ、ラブレターか。ふー……ぅえええぇぇぇええぇぇぇっっっ!?」
「び、びっくりしたぁ……」
「な、なんだよ。そんな驚くことか?」
下駄箱に手紙という古典的パターンが今さら通じるのかどうかは別にしても――まるでその古典的を初め
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