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らから漏れる鎮守府なども在るにはあるが、少数だ。片桐中尉は、案外自分の考えは妄想や夢物語りの類ではなく、当たりではないのだろうかと胸中で苦笑を零しつつ、皿に盛られたから揚げを口に放り込んだ。
「じゃあ、僕らって結婚どうするんでしょう……?」
「……まぁ、普通はうちの元上官の様に、艦娘と結婚ですな」
世界が変われど、変わらぬ物がある。職場結婚などどこにでも転がっている至極当然と世にある物だ。提督にとっての職場とはつまり艦娘達の職場でもあり、自然そうなってしまうのだ。
それを恵まれた楽園と思うか、閉じられた箱庭と思うかは、人それぞれだろう。
「……」
「まぁまぁ、貴方の様な若い提督なら、まだケッコンカリもしておられないでしょうから、考える時間はまだありますよ」
「…………」
「……」
「……」
「え、もしかして?」
提督は黙って頷いた。着任一ヶ月ほどで艦娘とケッコンカッコカリ済みというのは、片桐中尉が知る限り快挙……であるが、何故か片桐中尉はその情報をさほど重い物として受け取れなかった。受け取れなかったどころか、いつの間にかそんな物かと受け入れていた。何か無理やり修正された様な物であったが、それは片桐中尉には分からぬ事である。
「子供が産めるのは前に知りましたけど……まさか結婚も可とか……」
いつぞや、大淀がこういった会話の後執務室から慌てて退室していった事を思い出しながら提督は重い溜息を吐いた。ちなみに、提督はその後も特に説明を受けていない上に、最近では各艦娘の左手薬指のサイズを記した書類を渡されたばかりである。外堀はじわじわと埋められていた。
「あの、ケッコンカッコカリって、こっちだと――あぁいえ、艦娘と提督的には、どういった意味が……?」
「……事実婚、です」
提督はもう何も言わず、テーブルに突っ伏した。彼にとっては、ケッコンカッコカリの相手である山城は確かに嫁は嫁であった。ただしそれは二次嫁という奴だ。挙句彼は申し込んだ際お断りされている。格別思いが無いとは言わないが、色々と考えてしまう相手でもあった。
「艦娘の人権――扱いはまぁ、難しいところでして。法律上の結婚は無理ですが、あの指輪を送る事で事実婚としている状態でありますよ。うちの元上官なども、最終的には全員と結んでおりましたし」
「うぼぁー……まじかー……まじですかクマー」
何かに浸食され始めた提督を放って、片桐中尉は年若い提督を肴に次の焼酎を飲み始めた。
この提督は見ていて実に面白いのだ。提督ほどの年頃なら事実婚もそう珍しい物ではない。戦場が常に傍にある人種と言うのは、死が近い分血を残す、または家族を作ると言う事が早まる傾向にある。
まして海軍となれば、その源流にあるのは薩摩の血だ。
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