巻ノ二十七 美味な蒲萄その三
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「この旅のことをお話してじゃ」
「務めに入る」
「そうなりますな」
「うむ、ただ御主達は政には向かぬな」
こちらの仕事にはとだ、幸村は十人のこのことはもうわかっていた。これまで彼等を見てそのうえで。
「そちらは拙者がしよう」
「では戦に備えてですな」
「そちらが我等の務めですな」
「そして忍として」
「上田の内外を探ることがですな」
「御主達の仕事となる」
実際にそうだとだ、幸村は話した。
「そちらを頼むぞ」
「畏まりました」
「では我等殿の手足となりです」
「そのうえで、です」
「務めを果たさせてもらいます」
「侍として」
「そうしてもらう、御主達はわしの家臣であり義兄弟じゃ」
その契はもう結んである、そのうえでの言葉だ。
「では上田に戻るぞ」
「甲斐から信濃に」
「そうしましょうぞ」
こう話してだった、主従は蒲萄を食べ甲斐の他の名産も口にした。そのうえで甲斐を後にしてそのうえで。
信濃に入りだった、上田を目指した。その途中清海は今自分達がいる道の周りの深い森を見回しながら言った。
「流石に木と山ばかりじゃな」
「これが信濃じゃ」
清海に穴山が答える。
「この様にじゃ」
「木と山ばかりか」
「所々盆地になっておってそこに人がおる」
「それで大抵はな」
由利も話す。
「こうした山ばかりなのじゃ」
「ふむ、美濃の北よりも険しくないとはいえ」
根津は彼がいた国のことから話した。
「それでもな」
「深いな」
「進むだけでも難儀じゃ」
こう言うのだった、根津も。そして。
伊佐もだ、周りを見回しつつ言った。
「まさに天然の要害ですな」
「国自体がな」
「はい、進むに難しい」
伊佐はこう海野に述べた。
「守りやすい国ですな」
「それで信玄様も難儀された」
この信濃攻めの時にとだ、海野は伊佐に話した。
「随分手間取られた」
「さもありなん」
筧も言う。
「この様な場所ではな」
「山は何処でもあるが」
猿飛がその筧に続く。
「この信濃はな」
「また違うな」
「全くじゃ」
猿飛は前に前にと進みつつ述べた。
望月も周りを見つつだ、こう言った。
「上田までこうなら」
「来るだけでも苦労でな」
霧隠が望月に話す。
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