巻ノ二十七 美味な蒲萄その一
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巻ノ二十七 美味な蒲萄
幸村主従は幸村の言葉通り甲斐の蒲萄を食べた、そのうえでだった。
清海は唸ってだ、こう言った。
「いや、この蒲萄はです」
「美味いな」
「全く以て」
店で買った蒲萄を宿で食べつつだ、清海は幸村に言った。
「これはいいものです」
「そうなのじゃ、甲斐は田畑が少なく石高は多くないが」
「それでもですな」
「信玄様が心を砕いて政をされてじゃ」
そして、というのだ。
「様々なものを植えたり金山を見つけたりしてな」
「そうしてですな」
「豊かな国にしてくれたのじゃ」
幸村は今度は望月に話した。
「この通りな」
「町も栄えていて」
「そうじゃ、この様にな」
「豊かにされましたか」
「石高が少なくともじゃ」
「国は豊かに出来るということですな」
望月は確かな声で言いつつ彼も葡萄を食う。筧もその葡萄を食いながらそのうえで幸村に対して尋ねた。
「して殿、蒲萄のことですが」
「何か」
「堺では葡萄の酒がありましたな」
「南蛮の酒じゃな」
「蒲萄からも酒を造ることが出来るのですな」
「その様じゃな」
「書で読みましたがそれも面白いですな」
こう言うのだった、そしてだった。
穴山はその葡萄の酒についてだ、こう言った。
「ではこの甲斐でもあの酒を造ることが出来るか」
「出来るであろうな」
幸村は穴山が首を少し傾げさせて言ったことに答えた。
「米から酒を造られる様にな」
「やはりそうですな」
「そうした酒を飲みたいか」
「そうも思いました」
実際にとだ、穴山は幸村に真顔で答えた。
「面白そうだと」
「南蛮では普通の様じゃがな」
「ううむ、南蛮ですか」
海野は南蛮について思い言った。
「行けたらいいですが」
「南蛮にもじゃな」
「はい、天下が広いことはこの旅でわかりましたが」
「しかしじゃな」
「南蛮にも行きたくなりました」
まさにそうだというのだ、そして伊佐も言う。
「南蛮にはどれだけ珍妙なものがあるか」
「それも見たいか」
「耶蘇教の寺もさらに」
観たいと言うのだった。
「他にも様々と」
「確かにそれもよいな」
「見識も広まりますし」
「この度の旅では多くのものを観たが」
由利も葡萄を口にしている、その味を楽しみつつの言葉だ。
「明や南蛮はまた違う」
「本朝とはな」
「それを観ることも学問ですか」
「そうなる」
「だからなのですな」
「いや、我等は学はありませぬが」
それでもとだ、猿飛も言う。
「しかし旅はいいですな」
「旅を楽しむこともな」
「学問ですな」
「学問は堅苦しく考えずにな」
「楽しむもの」
「書を読むにしてもな」
「旅もですな」
「旅
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