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点であり、また誰もが吹雪に一目置く理由でもあった。
提督は吹雪に頷き、初霜は執務室に残って彼らを見送った。吹雪は秘書艦初霜にとって唯一人の先任艦娘である。初霜は吹雪と提督の邪魔をしなかったのだ。決して、吹雪は初霜を邪魔だとは思わないとしても、最初の、この鎮守府の始まりの二人の間に入るべきではないと初霜が決めているからだ。
初霜に見送られ、二人は演習メンバーが揃って待つ港前の控え部屋まで歩いていく。語ることは、やはり最近の出来事では一番大きかった、他の鎮守府行きの話だ。
「あの後大変だったんですよ、金剛さんと山城さんが食堂でばったり鉢合わせして、無言でにらみ合ったり、神通さんと長良さんが完全休暇中の艦娘達に実戦形式の特訓やろうとしたり、清霜とリベッチオが戦艦の艤装装備しようとして明石さんに怒られたり、赤い芋ジャージ着た人が隼鷹さんとやけ酒はじめて迷彩艤装を装備した人に腕挫十字固決められて本気泣きしたりしたんですから」「うん、居なくて正解じゃないかな、それは」
「司令官がいないから、そうなったんですよぅ! 居たらこんな事…………多分、してない……かなぁ?」
吹雪自体、ないとは言えない艦娘が数名いたので言葉を濁した。やる奴というのは、大抵常からやらかすモノである。赤い芋ジャージの狼さんとか金剛型一番艦とか扶桑型二番艦の事であるとは誰も断言しない。断言はしない。
表情をころころと変えながら吹雪は提督に話しかけていく。そんな姿を見ながら、提督は柔らかく微笑み呟いた。
「あぁ、やっぱ違うなぁ……」
「……はい?」
提督の零した呟きに、吹雪は首を傾げた。型も違う、外見も違う。それでも、何故か初霜と良く似た何かを提督は感じた。
「うん、この前行った鎮守府で、同じ吹雪さんと大淀さんに会ったんだ」
「あぁ、それで違うと?」
「そうそう」
提督は笑顔のまま頷いた。彼は少年提督の鎮守府で吹雪と大淀と出会い、言葉を交わした。それでも、彼は違うとはっきり理解できた。吹雪などは、確かに少々違う。少年提督の吹雪はまだ青いセーラー服だが、提督の吹雪の服装は黒いセーラー服で細部も違う。経験から来る自身や自己構成もあるだろうが、顔つきも少々違って提督には感じられた。だが、大淀はどう見ても大淀だった。提督の知る大淀と違いは見られなかった。それでも、提督はそれも見分けがついた。
理由は彼にも分からないが、分かる物は分かるのだ、と彼はそれを至極当然と受け入れた。受け入れて困るような物でもなかったからだ。
一人うんうん、と頷く提督と、それを見上げる吹雪が歩いていく。その提督に吹雪はまたも泣き出しそうな顔で声を上げた。
「そ、その、司令官! 私は私ですよ? 司令官の吹雪ですよ?」
「うん? そうだよ?」
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