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執務室の新人提督
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「うーん……うーん…………」

 初霜は自身に与えられた秘書艦用の机から顔をあげ、執務机にへばりついて唸り声を上げる自身の主――提督を見た。
 腕を組み、頭を乱暴にかきながらノートパソコンを睨む提督の相は、普段共に過ごす事の多い初霜をして余り見ない類の物であった。
 提督は腕を解き、ノートパソコンの電源を切って頬杖をついた。初霜は気遣うように提督に声をかける。
 
「あの……提督、どうされましたか?」
「ん……あぁ、いや、別になんでもないよ」

 と提督は初霜に返すが、彼女からすればここ数日の……少年提督の鎮守府から戻ってきて以来の提督の様子が乱れがちである事に不安を覚えていた。
 提督が他の鎮守府で何かよからぬ、或いは先ほどの様に思い悩む様な何かを見聞きしたのではないか、と初霜は思ってしまうのだ。
 
 ――あぁ、いっそあのまま引きこもって……いえ、閉じ込めてしまえばよかった。他の誰にも触れないよう深海の奥底に沈めるように静謐な世界に包んでおけばよかった。

 初霜は相当物騒な事を考えながらも、常の相に戻せていない提督に近づき、その背を優しく撫でた。労わるようにな手つきに、提督は苦笑を浮かべる。
 
「まぁ、ちょっと調べ物があってねぇ……僕も聞いた事はないから、多分こっちにも無いとは思うんだけれど……」

 初霜は提督の背を撫でたまま、首を傾げた。子犬の様な仕草だ。
 
「提督は、何をお探しで? もし宜しければ、私達もお手伝いしますよ?」
「んー……」
「私達では、提督のお力になれませんか?」

 提督を撫でていた初霜の手に、僅かだが力が込められた。当然、それを感じられない提督ではない。彼は首を叩きながら、まいった、と続けた。
 
「実はね、僕のことじゃないんだ」
「……?」

 またも首を傾げる初霜に、提督は鼻の頭をかきいて肩をすくめる。
 
「特定のレシピをね、探してたんだ」
「特定の、レシピ、ですか?」

 提督の口から出た言葉に、初霜は疑問符の透ける相で返す。初霜とてそのレシピとやらは知っている。提督がこの鎮守府の開発や建造で用いた資材のレシピ、だ。ただ、初霜と提督ではそのレシピの考えに少しばかり違いがある。
 初霜たち艦娘はそういう物もあるが、確定されたレシピは少ない、としか知らない。まさか自身たちがほぼ確定された艦種別レシピで建造されたなどと、PC内の世界に在った彼女達には理解の外だろう。
 
「その、提督はレシピをお求めで、でもそれは自分の為ではない、と?」
「うん、まぁそうだねー」

 判然としないながらも、初霜は提督の言から情報を固めていく。そして初霜は、それ――提督が悩みだしたのがいつ頃からかに気付いて頷いた。
 
「よく演習をされる、あの提督にレシピを
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