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執務室の新人提督
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「あ、これつまらないものですがどうぞ」
「ありがとうございます」

 礼儀正しく頭を下げ、自身の隣でゆっくりと歩く少年を提督は失礼にならない程度に眺めた。茶色の髪は柔らかそうで、瞳は大きくきらきらと輝き、頬はぷっくりとして体の線は細く背は高くない。
 
「あ、これ薩摩芋ですか。ありがとうございます、僕これ大好きなんですよ!」
「良かったですね、司令官」
「うん、そうだね吹雪」

 そう、その少年提督の三歩後ろを歩く駆逐艦娘、吹雪と彼の背丈、体つきは大差ない。そのまま衣装を交換しても違和感が無いだろうと思えるほどに、少年提督は実に愛らしい姿であった。
 
 ――いやぁ、凄いなぁこれ。

 提督とて写真で彼の姿は見知っていたが、やはり生となると視覚の捕らえ方は変わってくる物なのだろう。彼の後にいる吹雪とどこか似通った美少女顔もそうだが、匂い立つ犯罪臭とでも言うべきか、未だ未熟な四肢に本来なら鍛えられた男が着る白い海軍士官服とのミスマッチが、逆に何か危うい物をこの少年提督に与えているような、兎に角筆舌に尽くし難い物が生身の少年提督からは滲み出してしまっていた。
 
「あ、ここがここの執務室です」
「どうぞ」

 少年提督の言葉に、吹雪が静かに彼らの前に出て扉を開けた。提督は少年提督と吹雪に頭を下げ、彼の背後、先ほどのまでの吹雪と同様三歩後ろに佇む大淀も提督にならう。
 その二人に少年提督と吹雪も頭を下げ、互いにぺこぺこと頭を下げながら執務室に入る事となった。
 
「あぁ……やっぱりそう変わる物じゃないですよねぇ」

 提督は招かれた執務室兼、一応の応接間となっているその部屋を見回した。広さは提督の執務室と変わらず、内装もほぼ同じだ。当然、バスやトイレはないしゲーム機や暇つぶし用の本をなどを入れてあるダンボールは無い。ルームランナーは、言わずもがな、だ。
 ただし、提督の引きこもり用執務室にもある見慣れたものが、この部屋にもあった。提督はそれを見たまま苦笑まじりで口を開いた。
 
「あぁ、やっぱりいりますよね、冷蔵庫」
「……あの、そちらも?」

 びっくり、と正直に書いた顔で返す少年提督に、提督は苦笑のまま頷いた。
 
「喉も渇くし、一々給湯室からお茶とかジュース持ってきてもらうってのも、申し訳ないもんで」
「あははは、僕もそうなんですよ」
「もう司令官、それくらい気にしなくてもいいんですよ?」

 朗らかに笑う少年提督に、腰に手を当て頬を膨らませる吹雪。これだけで、提督には二人の関係がなんとなく見えた。少年提督にソファーに誘われ、提督はそこに腰を下ろす。それを見届けてから、少年提督は提督と向かい合う形でソファーに座った。互いに、背後に吹雪と大淀が立って控えている。艦娘二人の相は、先ほどまでに比
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