31
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
顔で話題をつなげた。
「僕ら提督には、それぞれ得意な……相性のいい艦娘達がいるじゃないですか。それを表す言葉ですよ。僕なんかは……駆逐、軽巡、重巡ですね」
「あぁ、みっつ"も"」
ここでも、提督は芝居をうった。ただし、これは上手くいった。
「はい……自慢になる、お恥ずかしい話なんですが……やっぱりその、特殊な生まれですから、成績はよくなかったんですが、こういうのだけは……はい」
何も悪いことはないというのに、少年提督は頭をぺこぺこと何度も提督に下げてくる。提督はそれが少し嫌で、態と明るい声を出してそれをやめさせた。
「凄いじゃないですか。ハンモックナンバーがなんです、あなたは、凄いんです。もう、凄いんです!」
何が、とか、どれが、とかではない。ただ凄いのだと提督は言った。そんな提督に、少年提督は暫し呆然とし、やがて頬を朱に染めて俯いた。同じ男の提督から見ても、なんというか駄目な仕草であった。駄目にする仕草であった。
話題はそれるが、ハンモックナンバーとは簡単に言えば同期生間の先任順位である。良い成績の者ほど良い役職につけるが、旧日本海軍ではこれによってまったく無駄な事もしていた。有名な話が南雲機動艦隊だろう。この南雲忠一海軍中将という人物、ハンモックナンバーにより空母艦隊の司令長官となったが、この軍人、本来は水雷屋である。しかも有能な。つまり、軽巡、重巡乗りなのだ。実際には参謀長官であった草鹿龍之介少将が空母戦を理解していた様で、外部、また部下たちからは草鹿機動艦隊、と揶揄されていたのである。有能な水雷戦屋の軍人を態々不慣れな空母艦隊の司令長官にしてしまうこのハンモックナンバーなる物、どう取るかはそれぞれにお任せしたい。
ちなみに、この航空戦に理解のない南雲中将と、南雲の陰に隠れて艦隊を動かしている草鹿少将に対して、多聞丸さんは批判的であった、という話も残っている。有名な、「南雲さんはやらんだろうなぁ」等はその証明なのだそうだ。
さて、提督に凄い、凄いと言われた少年提督であるが、彼は顔を上げて提督の目をじっと見た。きらきらと輝く、無垢な瞳だ。それが提督をじっと見るのである。反らしては失礼かと提督もじっと見返すが、彼の背はむずむずと痒みを覚え始めていた。
「よかったと、思います」
「……はぁ?」
ぽつり、と零す少年提督に提督は間抜けな声で応じた。その姿に少年提督は、ぽや、っとした感じで微笑み何度も頷く。
「なんとなく、電話とかで話した感じから大丈夫だと分かっていたんですが、こうやって話をして、やっぱり安心しました」
「う、うん? そう?」
何も理解していない提督は、何故か背を正して少年提督の次の行動を待った。何かっても直ぐ逃げられるよう、僅かに浮かした腰
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ