1部分:第一章
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だ彼氏いなかったな」
「そういやそうだな」
皆敬三の爆弾発言を聞いて話し合う。敬三はここでまた宣言する。
「彼氏がいようが構うものか」
「いや、構うぞ」
「また暴走しているのかよ」
「惚れたら突き進むのみ」
しかし彼は人の話を聞かない。聞かないというよりは一切耳に入っていない。
「違うか?」
「やっぱり凄い馬鹿なんだな」
「壮絶なアホじゃねえのか?」
また皆敬三を評して言い合う。
「いや、馬鹿だろ」
「アホだって、こいつは」
「愛故に。君の為なら死ねる!」
今度は古典的な名台詞を吐く。
「だからだ。俺は彼女に釣り合う人間になる!」
またしても宣言するのであった。
「何があってもな」
「それでさっきの言葉か」
「ああ、俺は鬼になる」
言葉が実に訳のわからないものになっていた。何処かの涙腺が異常に緩いラグビーの先生のようであった。これで生徒を殴りながら泣けばそのままである。
「彼女の為にな」
「まあ馬鹿につける薬はねえが」
「アホだとしてもな」
クラスメイト達の意見はここでは一致した。
「やるだけやってみな」
「進化するかも知れないからな」
「全てにおいて。俺は超人になる」
それでも言葉は変わらない。
「何が何でも。今それを誓うぞ」
「まあ頑張れ」
「無理しても頭は無理だと思うがな」
クラスメイト達の冷たい醒めたエールが送られる。こうして彼の努力がスタートした。それは本気であり壮絶なものであった。
毎日二十キロのダンベルを持ってのランニングに筋肉トレーニング。食事も肉から野菜、小魚、玄米に変えた。そのうえ何と猛勉強まではじめたのだ。
「先生、ここはこれでいいですよね」
「あっ、うん」
敬三に質問された彼がドン引きしながら彼に応える。
「それでいいよ。それにしても相良君」
「何でしょうか」
「それ、東大の入試問題だよ」
見れば東大文一の赤本であった。彼はそれを使っているのであった。
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