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執務室の新人提督
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に驚き、物静かな人物の意外な趣味にまた驚いたという状態だ。

「ふむ……それなら、僕なんかは那珂ちゃんさんの意外な特技も吃驚だったね」
「那珂ちゃんはあぁ見えて夜戦での目測雷撃戦超得意っぽい!」
「あの姉妹は夜戦火力おかしいですからね……」

 夜戦火力では上位に食らいつく夕立と綾波の賞賛である。その時点で川内姉妹達の夜戦での暴れぶりがどれ程であるか分かろうという物だ。
 そして、そのまま六人は誰それはあぁで、あの人はあれで、と自分達が知っている情報を出していく。そうなると、当然出てくる人物が居た。いや、出てこない訳が無かった。
 
「――で、肝心の提督は……何か特技とかあるのかな?」

 時雨の言葉に、皆が相を固くした。

「……ゲームっぽい?」
「得意とか特技って訳じゃないかもですね」

 夕立と高波は首をひねりながら応じ、
 
「読書が趣味ですから……速読、とかでしょうか?」
「綾波が知る限りでは、普通の早さですよ?」

 浜風と綾波は腕を組んで唸る。
 
 各々が頭を悩ませている中で、一人静かにお茶を飲む艦娘が居た。時雨はテーブルに身を乗り出し、その艦娘――初雪に口を向ける。
 
「初雪は、何か知らない?」

 時雨にあわせて、皆が初雪に目を向けた。が、初雪は黙ったままお茶を飲み続けていた。
 初雪が知っているのは、提督の作った料理の味だ。それが特技であるのか、趣味であるのかは初雪も知らない事であるのだから、彼女から返せる言葉は一つだ。
 皆の視線にさらされる中、初雪は湯飲みをテーブルに置き、常の相で小さく呟いた。
 
「知らない」
 
 小さな嘘で、あの夜の思い出を隠した。
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