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…かなって」
初雪のその言葉に、提督はにこりと微笑んだ。つられて、初雪も微笑んだ。
全部作り上げ、小さなテーブルに二人はつき手を合わせた。
「いただきます」
「いただき……ます」
提督はラーメンから、初雪はご飯と豚バラともやしの炒め物からだ。提督は普通に、初雪は上品に口へ運んでいく。
提督の簡単な男料理を口にした初雪は目を閉じてゆっくりと咀嚼し、またゆっくりと嚥下した。味は悪くない。流石に間宮の食堂で出されている物と比べるのは間違いだが、簡単な夜食として出る分にはなんの問題もない味だ。
目を開けた初雪の視界に飛び込んできたのは、自身を少しばかり不安げにみつめる提督であった。初雪は提督へ頷き、口を開いた。
「美味しい、です」
「あぁ、よかった……」
初雪の言葉に、提督は肩から力を抜いて息を吐いた。料理一つで大げさではないか、と思いながら初雪が口をひらこうとすると、それは提督の言葉に遮られた。
「僕が君達に何か食べてもらうのは、初めてだったんでねぇー……いや、よかった」
その言葉に、初雪は動きを止めた。そして、今食べた物をじっと見つめる。確かに、提督の言うとおりである。初雪達は執務室から出てこない提督の為、皆で食事を用意した。弁当当番制度なる物まで作って、である。が、誰かが提督から料理を作ってもらったという話を、初雪は聞いた事が無い。提督の言の通りであるなら、初雪が初めて、一番最初だ。
提督の最初期艦娘を姉に持ち、提督の配下にある駆逐艦娘のエースである初雪が、一番艦を、トップエース達を、更には第一旗艦を抜いての一番だ。
初雪は隣に座る提督を見上げて、声を上げた。
「提督……美味しい、です。その……ありがと」
「いんや、こっちこそありがとう」
自分の気持ちの十分の一でも確りと届いているだろうか、と初雪はただ隣の提督を見つめ続けた。
後日の話である。
間宮食堂にて、一つの会話があった。テーブルに集まるのは、時雨、夕立、綾波、浜風、高波、初雪、といったこの鎮守府でのエース駆逐艦艦隊である。トップエースには一歩譲るが、彼女達もまた精鋭である。さて、その精鋭達が少しばかり遅い昼食も終え、それぞれ席から去るでもなく何をしているかと言うと……
「加賀さんって、意外にカラオケ上手だって聞いたけど、本当かい?」
「あー……それ綾波も龍驤さんから聞きましたー。とてもお上手で、趣味の一つであるとか」
「っぽい?」
「かもです」
「前の飲み会の時、偶々私も同席していましたが……確かに凄いものでした」
それぞれの反応に、浜風が返して皆が、ほう、っと溜息を吐いた。彼女達からすれば、加賀にそんな特技があった事
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