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初雪は暗い廊下を歩いていく。彼女が向かうのは、提督の執務室が在る司令棟の給湯室だ。給湯室、というが実際にはガスコンロやそこそこ大きな冷蔵庫が置かれた、小さな調理室の様な場所だ。当然、そこには備え置きの食料が在り、艦娘達が自費で食材などを置いている。勿論、初雪もそこに幾つか備えおいて在る物があるので、今夜はそれを、或いは誰かが買っておいた共用の食べ物を口に入れようと考えているのである。
「……あれ?」
初雪は、思わず足を止めた。彼女の視界に入ってきた給湯室からは、明かりが漏れていたからだ。首をかしげて、まぁでもそうかな、と初雪は考えてまた足を動かしだす。今が夜の遅くだとしても、小腹がすいたと給湯室へ行く者はいるだろう。事実、初雪がそうなのだ。
ひょい、と部屋をのぞきこんだ初雪は、そこで暫し動きを止めた。
「……え?」
「あぁ初雪さん、おこんばんわー」
「お、おこんばんわー?」
常は閉じられがちな初雪が、一杯に目を見開いて眼前の人物を凝視していた。そんな珍しい初雪に凝視されているのは、明石の酒保でよく使われるレジ袋を持った提督であった。
初雪にじっと見られていると分かった提督は、持っていた大きなレジ袋を掲げて肩をすくめた。
「どうにも、お腹すいてねー」
「あぁ……提督、も?」
「……おや、初雪さんもかー」
徐々に常の相に戻っていく初雪の前で、提督は袋からインスタントラーメンともやし、豚バラ肉、レンジでチンするご飯等を取り出していく。ラーメンは袋タイプのインスタントだ。それらを取り出してから、提督は軽く頷いた。
「あぁ、丁度良かった」
「……よかった?」
「そうそう、よかった」
提督はテーブルにレジ袋から様々な物を取り出し並べていくが、量が少々多い。少なくとも、提督一人分の量ではなかった。
「いや、僕もここを使うにあたって、皆と同じように共用の食材を買ってきたんだけど、ちょっとばかし量がわかんなくてねー」
「ふむふむ」
初雪以上の引きこもりであった提督である。この部屋の冷蔵庫や棚にどれだけ入るかよく分からないまま購入してしまったのだろう。他にも、炭酸ジュースやスナック菓子等も提督は広げだした。
「というわけで、だ。初雪さんや」
「うん?」
常温で保存可能な物は棚へ、それ以外は冷蔵庫へと仕舞いだした提督は、首だけ初雪へ向けて口を開く。初雪はそんな提督を手伝おうと一歩踏み出したところであったが、提督の言葉に足を止めた。
「夜食、一緒に食べよう」
「はい、初雪……ご一緒します」
提督のその発言に、初雪は背を伸ばし海軍式の掌を見せない敬礼で応えた。
提督がおかずの一品にともやしと豚ばら肉を混
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