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「では、お手元の資料をご覧ください」
その言葉に、室内に居るほとんどの艦娘達は資料とやらを手に取った。
遠征終了後、大淀に引っ張られるように会議室まで連れて行かれた初霜も、釈然としない相ながらも資料を手にとっていた。厚みはない。精々十枚あるかどうかの代物だ。
であれば、そう大した事でもないのだろうと初霜は考えたが、その自身の思考に素直に頷く事は控えた。
初霜は室内に居る、自身と同じように訝しげに資料を見る者、または事情を知っているのか、熱心に手元の資料を見つめる者、そういった同僚達を流し見て、心中穏やかならぬ溜め息をついたのだ。
鎮守府のまとめ役、長門。秘書統括とも言うべき大淀。一水戦旗艦阿武隈、二水戦旗艦神通、三水戦旗艦川内、四水戦旗艦那珂、第一艦隊の両目にして歴戦の龍驤と鳳翔。他にも、赤城、加賀、白雪、多摩、妙高、最上、高雄、古鷹、雷、暁等などといった一軍及び各艦種代表又は苦労人たちばかりが集められている会議室である。さらに初霜の隣には、俯いて親指の爪を噛みながら何事かぶつぶつと呟く提督の嫁艦山城まで控えているのだ。提督の秘書艦初霜までここに加えれば、会議室で今から行われる会話が資料同様軽い物であるとは、到底初霜には思えなったのである。
さて、何か物騒な山城の隣に座らされた上、どう考えても楽観視出来ない会議の行方に肩を落とす初霜を尻目に、まとめ役の長門が席から立ち上がり腕を組んで周囲を見回した。
「さて、この度の提督重婚作戦の指揮をとる長門だ。よろしく頼むぞ」
その意味不明な言葉に数名は首をかしげ、数名は頷き、数名は吹いた。初霜は当然首を傾げた側だ。様々な反応の彼女達を冷静に眺めたまま、長門は重々しく頷いた。
「事情を知らぬ者もいただろう。だが、兵は神速を貴ぶ。この作戦は速やかに発動すべしと私と大淀は考えた。驚いた者もいただろうが、許して欲しい」
「あぁ……いえ、良いんですが……」
初霜と同じく、事情を知らなかった白雪が胸の前で小さく手を振っていた。そして、その隣に座る赤城は、落ち着いた顔で長門へ声をかける。
「それは、提督の御意志でしょうか? 事情を説明しないまま、事を運ぼうとはしていませんか?」
その言葉に、長門と大淀は僅かに顔を強張らせる。それを目にした瞬間、数名の艦娘が体に力を込めた。阿武隈、暁、雷、初霜だ。特に阿武隈は顕著であった。彼女の相は普段のどこか甘さの抜けない末妹の相ではなく、完全に戦士の顔になっていた。
「落ち着いて下さい、一水戦の皆さん」
宥めたのは、神通である。ただし、彼女の相も常の物ではなく冷たく険しい。
「まずは事情を。ただし、納得いかなければ、相応の覚悟をお願いいたします」
阿武隈、神通の鋭い眼光を受けてなお泰然と佇み、
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