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執務室の新人提督
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長門は心身乱れぬ様子で口を開いた。
 
「確かに、提督はまだこちらでのケッコンカッコカリの意味を、私達とは違い理解しておられないようだ」

 提督は、理解していない。ただ、艦娘達は多少違う。
 彼女達はここに来た際、いや、ここで待機していた間にこの世界での自分達と同調していた。当然、その中で大淀のように、大本営から派遣された大淀と、提督の下に居た大淀が混じって暫し冷静に混乱していた者もいたが、それ以外は混乱無く馴染んだのだ。ゆえに、ある程度の事は理解している。例えば、初霜はここでの艦娘の在り方を提督に教えもしたし、青葉などは他の鎮守府の青葉と違和感無く、また違和感を覚えられない程自然にこの世界に馴染んでいる。
 
「だが――私は、これに価値を見出した。敵の弱い所をつくのが戦術であり、敵の知らぬ所から侵攻していくのが戦術だ。卑怯と罵られ様と、まずは勝つ為に進むべきだ」

 言いたい事は初霜にも分かる。敵に察知される前に奇襲する、というのは戦術上なんの間違いもない。常道だ。が、今回それを仕掛ける相手が悪い。阿武隈や神通などはやはりそこが気に食わぬようで、その双眸から冷たい光は消えていない。だが、流石にこの二人も次の長門の言葉で相を常の物に戻した。
 
「私が第二嫁艦に推したいのは、鳳翔さんだ」

 鎮守府のまとめ役をして、さん付けされる鳳翔は、その言葉に目を丸くした後固まってしまった。脳まで言葉の意味が届かないのだろう。そんな鳳翔を放置したまま、長門はまだ続ける。
 
「あるいは、古鷹、夕雲、雷……そうだな、あとは新参ではあるが瑞穂もいいだろう」

 長門の上げる艦娘達を脳裏に描き、皆が頷いた。長門の言いたい事が分かるからだ。そして、判然としたからだ。長門は提督を守るつもりだ、と。
 長門以外の全員が、初霜の隣に座る航空戦艦に目を向ける。そこには未だ親指の爪を噛みながら孤影悄然の山城だけが居た。
 どう見ても、誰が見てもホラーである。そこに癒しの要素はまったく無い。ために、皆長門の上げる艦娘達へ反対意見を出さなかった。ただ、名を出された艦娘で現在この会議室にいる者達といえば……鳳翔は固まり、古鷹は俯き、雷はドヤ顔で胸を張っていた。実に様々である。
 
「私は、やはり前例がある、という意味で白雪さんと赤城さんです」

 長門の隣に座っている大淀の発言に、一部を除いた艦娘達が首を傾げた。その様に、今度は大淀まで首を傾げる。やがて彼女は何か思い至ったのか、手を、ぽん、と叩いてまた発言する。
 
「私はこちらの、大本営の大淀を取り込んだので知っているのですが……私達の世界でも、このお二人は大本営から与えられるのですが、実はこちらでも同じなんです」

 彼女達がここに来る前に居た世界では、任務の報酬という形でこの二人は
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