8部分:第八章
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耳に彼等の言葉は入らないままだった。
「お姉ちゃん彼氏いたの」
「どうも」
その彼氏からも返事が来た。
「僕がその。誠子さんとお付き合いさせてもらってる」
「詳しい話は後でね」
しかし話は途中で誠子によって遮られてしまった。
「もうすぐ電車出るからね。乗る?」
「いえ、いいわ」
今の電車には乗らないことにした遼子だった。
「気が変わったから」
「そうなの」
「それにしても。お姉ちゃんに彼氏がいるなんて」
「驚いたの?」
「想像もできなかったわよ」
口を少し尖らせて言うのだった。
「こんなことって。本当に」
「驚かせるつもりはなかったけれどね。それじゃあね」
「ええ」
「行きましょう、渡君」
遼子にも見せたことのない晴れやかな笑顔を彼に向けての言葉だった。
「毎朝のデートにね」
「はい、誠子さん」
彼にエスコートされるように電車に乗りそれから出発した。その姉の仕草は実に軽やかでかつ晴れやかだった。それも遼子がはじめて見るものだった。
遼子は呆然と姉を見ていた。しかしここでわかったのだった。
「恋ね」
これである。
「お姉ちゃんが奇麗になった理由は。それだったのね」
「まさかよ、こんなことって」
「何てこった・・・・・・」
「恋だったなんて」
「あああ・・・・・・」
「朝から絶望したぜ」
やはりここでも男の子達の嘆きは耳に入らない。遼子はあくまで自分の中だけで完結していた。
「そういうことね」
電車の扉が閉まる。誠子はその向こうで彼氏を見て楽しく笑っていた。
「お姉ちゃんの奇麗になった理由。それなら」
そして次にはあることを思うのだった。
「私ももっと奇麗になってみせるわ。素敵な恋を見つけてね」
そう決意しつつ電車を見送る。電車は少しずつプラットホームから離れそのまま駅を後にする。遼子はその電車を見送りつつ晴れやかな顔で立っていた。これから自分も姉と同じようなことでもっと奇麗に、晴れやかになろうと決めて。一人微笑むのであった。
美容健康 完
2008・10・14
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