アザーワールド
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し、大切な人を作る事に恐怖があるのかもしれない」
「大切な人を作る事に恐怖、ですか?」
「そう。ジャンゴさんは母を失い、父を倒し、そして2年前に唯一生き残っていた肉親だった兄のサバタさんまでも失った。要するに、家族と全員死別してしまってる事になるんだけど……それがジャンゴさんの心に、自分が家族を作ったら同じように死んでしまうんじゃないかってトラウマが出来ちゃってるのかも……」
「そんな事は……」
「無いとは言い切れない。このサン・ミゲルだって見てわかるように復興はかなり進んだけど、そもそもイモータルに襲われて多大な犠牲が出た事は過去に何度もある。サバタさんやリンゴさんの件が良い例だ。私達だって、イモータルに襲撃されたら生き残れる保証もないよ」
「確かに私もかつてサン・ミゲルが襲撃された際、伯爵に捕まった事があります……でも……」
「気持ちはわかるけど、リタ。これはあくまで私の考えであって、ジャンゴさんの考えている事と違うかもしれない。どこまでいっても結局、本人次第なんだ。私達に出来るのは、ジャンゴさんを傍で支えてあげるぐらいしかないんだ」
「はぁ……そうですね。では私はこれまで通り、精いっぱいジャンゴさまを支えていきます! いつかちゃんと振り向いてくれるように、ジャンゴさまのお傍で尽くしていきます!」
自ら元気を振り絞ったリタは果物屋へ戻って行った。健気な彼女の後ろ姿を見届けたシャロンは唐突に言葉を紡ぐ。
「ジャンゴさんは自分が未来に命を繋ぐ責任がある事は自覚している。でも皆の死の上で、自分が家族を持つという“幸せ”を掴んでも良いのかと躊躇してしまっている。だからさっきの様に誰かの好意を目の当たりにする場面になると、答えを出さずに行ってしまう。……おてんこさま、彼も人間だってこと、わかってるの?」
シャロンが振り返って尋ねるように言うと、彼女の正面におてんこが姿を現す。彼女の言葉におてんこは唸り声を漏らし、言葉をひねり出すように答える。
「う〜む……これまで世界の命運を賭けた多くの戦いを乗り越えたジャンゴなら、いずれ乗り越えてくれると思っていたが……今回ばかりは少々厄介らしい」
「2年間ずっと引きずってるもんね。それに正確には戦いで培った怒りと哀しみ、それら負の感情全てが時間を置いた事で鮮明に蘇ってるんだよ。それに家族を一度に全部失うのと、一人一人死別していくのとでは精神に受けるダメージの質も種類も違う。前者は一度の喪失感が凄まじいけど、後者の方は立て続けに受ける事で傷が更に深くなっていくんだ。その間隔が短ければなおさら、ね」
「まとめると……これまでの別れによる巨大な喪失感が、ジャンゴの心に一定の線を引かせてしまっている、という事か?」
「簡単に言えばね。ここにいる私や皆も
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