アザーワールド
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世紀末世界、サン・ミゲル北部……四方封印によって守られているはずの螺旋の塔。その頂上部に一人の少女がいた。黒い鎧を身に着けて肩まで届く紫の髪をたなびかせ、服装とは裏腹にあどけない顔立ちに華奢な体躯をしたこの少女は、サン・ミゲルの街を見下ろしながら虚ろな目で呟く。
「俯瞰。ここが、あの方の故郷……」
その時、少女は視界の向こう……街門から棺桶バイクで帰還中の太陽少年ジャンゴの姿を見つける。徐に微笑を浮かべた少女は、螺旋の塔の頂上部の端へ歩いていき……そのまま頭を下にして落下する。まるで投身自殺のような状況の中、少女は冷静な顔のまま力を発動した。
「暗黒転移」
そして螺旋の塔の入り口、約束の丘には落下してきたはずの少女の姿は無く、静寂が漂うだけだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんや……? 妙に胸騒ぎがする……」
「どうしたの、ザジさん?」
「あ〜大丈夫や、シャロン。ちょっと疲れただけやで」
「疲れたって……辛いなら休んでも良いんだよ?」
「ならせっかくやし、お願いしよか。じゃあ早速ウチの代わりに、スミスのじいちゃんに頼まれてた物を届けに行ってくれへんか? 鍛冶屋はすぐそこやし、簡単やろ?」
「いいよ。それで届け物はこれ?」
「せや。レディさんにはウチから言っとくから、よろしゅうな〜」
ザジに頼まれた事でシャロンは布にくるまれた届け物を持ち……すぐに降ろした。そして訝し気な眼をザジに向け、彼女は苦笑気味に答えた。
「アハハ、それめっちゃ重いやろ? 実はそれの中身は色んな希少金属の塊なんやよ。オリハルコンとかトラペゾヘドロンとか諸々」
「伝説の金属とか輝くアレとかどこで手に入れたの!? というかそんなの重くて当然だよ! そもそも女子に運ばせる物でもな……あ、あ〜そういう事?」
「ウチが疲れてる理由わかった?」
「身をもって理解したよ……。はいはい、疲れてない私が持って行きますよ〜っと」
「ほな、いってらっしゃ〜い」
宿屋を出たシャロンは届け物の重さでふらつきながらも階段を下り、右折した先にある鍛冶屋へ入った。そこでは白髪の老人が姿勢をかがめて炉の温度を確かめており、シャロンに気付いた彼はすぐに荷物を受け取った。
「すまんすまん、重かったじゃろう?」
「次から力仕事は、シャイアンさんとかに頼んで下さい……」
「わしもそうしたかったんじゃが、いかんせん人手が足りなくてのう。今回は勘弁してくれんか」
「皆にも事情があったんですから別に怒ってませんよ。それよりこれらの金属は何に使うんですか?」
「うむ、実は“太陽機ソル・デ・バイス”の修理のためなんじゃ。ずっと壊れたままにしとくわけにもい
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