第十六章 ド・オルニエールの安穏
第五話 ド・オルニエール
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「「「―――はぁっ!!?」」」
「……仲良いじゃない」
「「「…………」」」
全く同時に反応したルイズたちの様子に、一瞬目を丸くしたキュルケは、馬車の隅で縮こまって震えているティファニアに苦笑を向けた後、馬の足を緩め士郎が乗る馬と並んだ。
「少しはフォローしたら?」
「……無理を言うな」
キュルケの呆れたような声に、士郎は項垂れ疲れた声を漏らした。
「で、どんなところなの? あなたが下賜されたド・オルニエールって」
「詳しくは知らないが、確か年収は一万二千エキューだと聞いたな」
「へぇ、なかなかのあがりじゃない」
「まあ、確かに、しかし、領地などもらってもな。経営なんて全くの素人だというのに」
士郎が頭を掻きながら困ったように笑う―――と。
「そっちは任せときなさい。土地の管理については慣れたものよ」
「何であなたがシロウの領地に口を挟むのよ」
「あら? 駄目なの?」
「駄目に決まってるでしょッ!!」
凛とルイズが言い争い、再度空気が悪くなる背後の馬車の雰囲気に、士郎はまたもや肩を落としてトボトボを馬を歩かせた。
そんな士郎の肩を同情気味に肩を叩くキュルケ。
後ろからは更にヒートアップする些かいの声。
「そう言えばあなたリネン川の決闘でも大分荒稼ぎしたそうねっ!」
「ああ、あれ。まあ、確かに大分もうからせてもらったわね。でもまあ、もう殆んど使っちゃったけど」
「なっ、使ったって―――シロウで儲けたんでしょっ! なら少しはシロウのために残しておきなさいよっ!」
「必要経費よ」
「必要経費って……一体何に使ったのよ!」
「直ぐにわかるわ」
「いいから、さっさと教えなさい―――っ!!」
ルイズの噴火の如き怒りの咆哮を背後に聞きながら、士郎は空を見上げる。
雲一つない青い空を、一羽の鳥が気ままに飛んでいる。
このまま何処か遠くに行きたい。
自然と潤む視界の中、ぽんと肩を叩かれる。
さてはキュルケがまたも案じてくれてるのか、と思い振り向くと―――。
「シロウ。渡されたおやつが全てなくなりました。おかわりはありますか」
ほっぺにクッキーの欠片を付けたセイバーが真剣な眼差しを向けていた。
…………。
士郎はそのまま再度空を仰ぎ、遠い空へと翔けていく鳥の後ろ姿を見つめながら返事をする。
「……荷台にあるから適当に持って行ってくれ」
「わかりました」
うきうきとした感情を隠せない声で返事をしたセイバーが、今にも戦闘が始まりそうな馬車へ向かって嫌がる馬を向かわせていく。
ふと、士郎は何も悲しい事がないのに、何故か頬を一筋の涙が流れた。
いつ爆発するかも分からない空気を
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