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この異世界に統一神話を ─神話マニアが異世界に飛んだ結果─
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いから。
ただ願わくば──俺の成果を求める人が現れてくれると、もっと嬉しい。必要とされないのは、いくら期待していないとは言っても少々辛い。求めてくれる人がいるのは嬉しいことだ。
「誰もが統一神話を求める世界──なーんてな」
そんな妄想を懐きつつ、俺は今日の作業を開始する。
統一神話の探究方法は、いたって簡単で単純だ。一柱の神格と、もう一柱の神格の権能や特徴を比較して、似通ったところを発見すれば『共通神格』である、と位置付ける。
そうやって見つかった共通部分……相同性を記録し、また別の神や英雄、事件と見比べる。そうやって、起源を探るのだ。
共通神話の有名なところでは、『なぜ人は短命なのか』という事を説明した『バナナ神話』、古代の人類を襲った大災害を描いた『
浄化の大津波
(
ウトナピュシュテム
)
』や『
裁きの光
(
セクメト
)
』、あとは人類の最後に、世界中の英雄が甦って故国を護る、『
終末戦争
(
カリ・ユガ
)
』か。
それとイナンナ系女神の存在かなぁ……ヤンデレェ……。いや、俺は好きだけどねヤンデレ。
今日の俺は、数日前に図書館で見つけた、聞いたこともない名前の神々が描かれた叙事詩と、既存神話の照らし合わせである。全体的な雰囲気は、バビロニア神話に近いか。かなりシュメール神話に近い、初期の頃の神話のような気がする。重大な役割を持つ兄弟の主神が、神聖数たる『
三柱
(
トリムルティ
)
』ではなく二柱だ。これはトリムルティが一人の父と、その二人の息子で構成されるメソポタミア系の神話に近い。
「ん? この神、イナンナ系じゃない……ぐっ……!?」
その時だった。
突然、頭痛がはしった。脳髄の中心を揺り動かすように、ずきり、ずきりと、痛みが続く。
「なん、だ、これ……!」
自慢ではないが、体力が無いためフィールドワークに向いていない、と言われたほどの俺は、当然痛みにも耐性がない。これは、かなり、きついぞ……!
痛みは、鋭い熱へと変わる。
俺はよろよろと立ち上がると、洗面所に向かって歩き出した。頭を冷やしたい。
しかし、体力の限界は俺を完全に蝕んだ。
ぐらり、と傾く体。痛み。頭に激痛。
俺の意識は、そこで暗転している。
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