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この異世界に統一神話を ─神話マニアが異世界に飛んだ結果─
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 神話伝承の類いに興味を見出だし始めたのは、いったい何歳(いくつ)の頃の事だっただろうか。

 始まりの理由は、よく覚えていない。気が付いたときには、のめり込んでいた。

 絢爛な神々。勇猛な英雄達。そして魅惑的な精霊種。最初は、ただ彼らの活躍を享受するだけだった。その輝きに。その栄光に。夢と幻想を懐いて、眼を輝かせるだけだった。

 いつからだっただろうか。『神の実在』を信じなくなったのは。

  英雄は、神々は、本当に居たわけではないのだ、と、いつのまにか受けれ入れていた。

 しかしそれは、俺が神話伝承への興味や憧れを棄てた、ということと同義にはならない。逆だ。俺は、神の非実在性の裏に、ある目的を見いだしていた。

 全ての神話は、その地に住む人々の起源を写す鏡だ。

 例えば、『地母神』という概念がある。神々の中でも、母性や女性の象徴としての役割が強い女神達の事を、総称してそう呼ぶ。

 その中でも、あらゆる神々の起源となる母たる大女神は、その神話の広まった土地で愛されたもの、神聖視されたもの、求められたものを司る。

 例えば大地なき島々(ギリシア)では大地の女神(ガイア)が。
 例えば二つの川に挟まれた地(メソポタミア)では海の竜女神(ティアマト)が。

 愛された故に。求められた故に。
 他ならぬ『命の源』、人類の最初の疑問たる『なぜ私は生まれたのか』『どうやって誕生したのか』……その概念の回答として、彼女らが、祭り上げられた(創造された)語りあげられた(想像された)


 例えば、ひとつの英雄譚がある。そこに記されたのは、それが語られた当時にあった重大な事件や、疑問に思われたことが反映される。

 砂漠の王国(ダヴィデ)海の民(ゴリアテ)を、五つの会戦(ハメシュ・アヴァニム)を以て撃滅し。
 (バァル)(モト)と争い死に、そしてまた春が来て(甦って)(モト)を殺す。

 その出来事が、人類にとって大きなターニングポイントであった故に。
 その発見が、人類にとって重要な現象であった故に。

 そんな、神話の裏を探るのが、俺の目的になっていた。全ての神話を繋げて、再解釈し、感動する。それが俺の、『神話伝承への興味』のカタチだった。

 神話の裏を探るのは、楽しかった。

 全ての神話の奥に隠された出来事を、概念を紐解けば、人類の起源が──人が辿ってきた(アカシック・)全ての歴史(レコード)が分かるのではないか。それが、俺の中にあった期待だった。

 いや、それはもしかしたら建前に過ぎなかったのかもしれない。俺が知りたかったのは。期待していたのは。

 ──人類の誕生に、その歩みに、もし、本当に神々や英雄がいたならば。


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