圏内事件 ー推論ー
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ナがなんとも言えない表情をしていた。
店内はやはり、自分達以外プレイヤーは一人もおらず、閑散としていた。安っぽい四人掛けのテーブルに座り、やる気のなさそうな 店主 に注文をしてきたキリトが戻ってきたところでアスナがうんざりとした表情で呟く。
「なんだが残念会みたいになってきたんだけど」
「気のせい気のせい。それより、お忙しい団長様のために早速本題に入ろうぜ」
アスナが事件のあらましを説明する間、いつもと違った反応でも見られないだろうかと思い、目の前に座るヒースクリフの一挙一動を観察していたが全くと言っていいほど、表情に変化がなかった。唯一、カインズの死の場面で片眉がピクリと動いたくらいだ。
「では、まずはキリト君の推測から聞こう。君は今回のPK事件、どんな手口で行われたと考えているのかね?」
一通り話を聞き、状況を把握したヒースクリフはふむ、と頷きキリトへと話を振った。
話を振られたキリトは頬杖をついていた手を外し、三本指を立てて見せた。
キリトの提示した仮説は3つ。
一つ目は、デュエルによるもの。
二つ目は、システム上の抜け道。
三つ目は、アンチクリミナルコードを無効にするアイテムもしくは、スキル。
だが、三つ目の仮説はヒースクリフによって切り捨てられた。
曰く、『公平さを貫いているこのゲームにおいて、それを真っ向から否定するような代物を作るわけがない』とのこと。
「もっとも、私やユーリ君のユニークスキルは別だがね」
ヒースクリフはそう締め括るとこちらへと流し目を送った。寒気がした。
「いずれにせよ、仮説その二は検討に時間がかかり過ぎるし、仮説その三は証明のしようがないな」
「そうなると仮説その一……デュエルによるPKから検討するのが妥当かしらね」
だが、ここで一つ素朴な疑問が生じた。
「そう言えば、デュエルのウィナー表示の出る位置の決まりってどうなってるの?」
「確か……両者の中間だったはず」
「ふむ、なかなか予習をしているようだが……50点の回答だ」
暇つぶしでマニュアルに目を通してみた時の記憶を思い出し、アスナの疑問へと返答する。なぜか、教師然とした口調のヒースクリフに点数をつけられてしまった。
「正確には、決闘者二人の距離が10メートル以内ならば、両者の中間地点。それ以上離れていたならば、双方の至近に窓が表示される」
「惜しかったな」
『ここ、よくテストに出されるので復習しておくように』と締めくくったヒースクリフが得意げな表情を向けてくる。なんとも言えない敗北感に打ちひしがれていると隣に座るキリトに肩を叩かれ慰められた。解せぬ。
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