圏内事件 ー推論ー
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感を強めるアスナの後ろで、ふむと何かに納得したかのうようにヒースクリフが呟く。
「……犬の尻尾が垂れている時は、恐怖や不安を感じていたり、自分より強い相手にへりくだる場面が多いそうだが」
そうヒースクリフが口にした瞬間、ユーリが一瞬だがギクリと固まった。そして、硬直が解除されるとあからさまに目線を反らす。
「そういえば……」
何かに気がついたらしいキリトは顔だけを後方に向けたまま、薄く微笑む。
「ウワサじゃあこの街には道に迷った挙句、転移結晶まで持ってなくて延々と彷徨っているプレイヤーがーーーーッ!」
一瞬で表情を消し、キリトの懐へと肉迫したユーリ。彼の体が沈んだかと思えば、腰溜めに構えられた右拳を薄いライトエフェクトが覆う。ユーリの次の行動を予期したのか、言いかけた言葉をのみ込んだキリトは後方へと下り、ユーリから距離を取ろうと試みる。
ーーだがしかし、ユーリは踏み込みと共に思い切り、キリトの足を踏みつけ、それを阻む。
刹那の内に行われた二人の攻防は、ユーリに軍配が上がり、ライトエフェクトに覆われ、強く握られた拳が一際強く輝く。
「ーーーグハァ!?」
光芒の尾を引いた拳は的確にキリトの顎を捉え、強烈な一撃を容赦なく、叩き込んだ。
薄暗い路地を照らす紫の閃光。爆発にも似た衝撃音。キリトの体はふわりと宙を浮き、直後、ドスンと鈍い音を響かせ、硬い石畳へと叩きつけられた。
「うわっ……すご」
「……お見事」
あまりの鮮やかな一撃に感嘆の声を漏らしてしまう。体術系のソードスキルまで用いてキリトに強烈な一撃を見舞ったユーリを見つめていると、スタスタと無言で倒れ伏すキリトへと近づき、衝撃に表情を固めたまま 硬直 している彼の胸ぐらを掴み、引っ張りあげると目線でさっさと案内するように促した。
「……気をつけよ」
ーー人間、どこに逆鱗があるかわからない。
ユーリの凶暴な一面を垣間見たアスナは、あまりユーリを怒らせないようにしようと決めたのだった。主に許可なく尻尾を掴んだりとか……。
一方で、「あぁ……」と何かを思い出したかのように呟いたヒースクリフは何事もなかったかのように振る舞うユーリを呼び止めーー、
「ユーリ君、圏内で迷子になったのなら道端にいるNPCに頼めばいい。10コル支払えば、転移門広場まで案内してくれる」
「うるさいよっ?!」
ーー見事に、地雷を踏みぬいた。
◆◇◆
それから間もなくして、迷宮のような隘路を抜け、ようやく目的の店へと着いた。
薄暗く胡散臭い店内に尻込みしていると、キリトはなんの戸惑いもなく暖簾を潜り、店へと入って行く。ちらりと横に視線を向ければ、アス
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