第1章〜ぼくらを繋ぐ副作用〜
08.恋心
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菊地原は分厚い紙の束を眺める。
『感情と記憶の直列関係』と書かれている。
興味はないが如月の集めたデータらしく、読んでいて楽しい。
感情と記憶は直列していると言うデータ。
最後までは読めていないが、菊地原は束を閉じて風間隊の作戦室に置き去りにした。
そしてA級昇格祝いに来なかった如月に会いに行った。
寒いと感じてはいたが、まさか雪が降るとは考えていなかった。
カイロを握りながら、菊地原は目的地にたどり着いた。
インターホンを襲うとして、菊地原は躊躇った。
家の窓は開いている。換気中なのだろう。
部屋からは二人の人の声がした。
盗み聞きの趣味は菊地原にないが、ついその声が耳に入ってしまう。
「天井の破壊は見事だったな。」
「どうも、ほめてくれて」
城戸司令官と如月だった。
二人が一緒にいる場面など見たことはない。
菊地原には不思議な組み合わせに思えた。
なぜ、そして何の話をしているのか、気になって仕方ない。
「親父、珈琲しかないがいいか?」
「それより話の続きだ。
いつから隠していた、体調の話を。」
「隠していたわけじゃない。大丈夫だろうと考えていただけだ。
はぁ・・・原因不明で今は咳が出るだけだ。
心配するな」
菊地原は驚いて窓をジッと見つめた。
自分には何も聞かされていない話を聞いてしまった。
しかも、如月が病気だという話だ。
風間や歌川が知っていたのか、と菊地原は疑念を抱く。
「菊地原にだけは絶対言うなよ」
如月がそういう言うのが聞こえ、菊地原は不愉快になる。
年齢差。子ども扱い。身長差。
気を使われていることが不愉快ならない。
城戸司令官の娘と隠していたのはともかく、自分にだけ病気のことを隠すように言った如月が嫌いだった。
その感情をなんと言うか。世の中でいう恋心である。
翌日のこと。
一心不乱というのはこれか、と如月は思う。
菊地原が自作訓練室にて無我夢中でモールモッドを切り刻んでいた。
その光景は異様に見えた。
データのモールモッドを消して、如月は菊地原に問いかけた。
「菊地原、もしかして、A級昇格祝いに来なかったことをふて腐れているのか?」
「そこまで子どもじゃないよ」
「ならなんだ。言わないと鈍感な俺にはわからないな。」
「病気の話が気になる」
菊地原はまっすぐ答えた。
如月は頭を掻きながら反省する。
換気しながら話したせいで話が漏れていたのだ。
しかし、頑固なまでに菊地原に言うつもりはなかった。
「さあな。」
「言わないなら別にいい。
城戸司令官や風間さんに聞くから。」
「はぁ〜あんたのその性格はどちら似なんだ?」
如月はあっさり折れた。
勝ち負けが決まっているものを、
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