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逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 3
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 「すみません……」
 ふむ。ちょっぴりでも前向きな言葉を引き出した分、良しとするか。
 根は真面目だからこそ自分の不器用さに辟易してるんだろうし、真面目だからこそ明確な目標を与えればきっと転んででも進む。初手にしてはまずまずの感触だ。この調子で巧く丸め込んでしまえれば楽なのに。
 「ところで、いつまでそうしてるつもり? 苦しいんならさっさと起きなさいよ」
 一向に動こうとしない背中をペシペシ叩いて、首を傾げる。
 「いや、その……えーと」
 ぶら下がってる両手両足の先だけが心許なく宙を泳いで……って、まさか。
 「起き上がれなくなった、とか?」
 「……すみません」
 アホかあぁぁああッ!!



 どうやらカールは絶対に落ちない姿勢を考えた末、少しでも接触面積を増やそうと枝にしがみ付いていたらしい。
 落ちたら私に迷惑を掛けそうだから……って、起き上がれなくなったら同じでしょうが! 何の為に私が一段下で寝たと思ってんのよ。ったく。
 本当ズレてる。もーいろんな意味でズレまくってるわ、このお莫迦。
 しかも
 「……キノシュ?」
 空一面がすっかり青くなった頃、木から降ろしてやったカールが朝食として集めて来たのは、色とりどりで野性味溢れる様々な植物。
 目を痛めそうな赤色のカサが付いた丸っこい胞子菌類とか、冴えた紫色のネーギュっぽい物とかを食べ物認定するこいつの感覚は異常過ぎる。
 「植物なら逃げないし、動物より食べることに抵抗が少ないから。……どうしてかな。植物も生き物なのに、殺してる感覚が薄いんだ」
 「そりゃ意思を認めてないからでしょ。その極彩色は毒入りとしか思えないから止めておきなさい」
 地面に積んだ植物の中から悪魔の目にも禍々しい物体を摘まみ上げ、草むらにポイッと放る。
 「意思を認めてない? あ、じゃあ、これならグリディナさんも食べられる?」
 白い繊維が無数にわさっと伸びてるカリフラウもどきを、私に食えと?
 「人間は喋ったり動いたり鳴いたりするものに共感するでしょ。植物が人間にもはっきり判る言動してたら、動物と同等に罪悪感を持ってたんじゃない? 抵抗しない物には何をしても良い。反抗しないんだから文句は無いだろってトコかしら。あぁ、人間同士でもよくある話よね。苛めとか表現されてるあれ……要は、相手の意思を認めてない。見ようともしてない。自分の他は生物とも思ってない。認識能力が根っこから欠落した、幼児精神的無知な自我の殺戮行為。あれ、やられたほうはたまに「悪魔」とか言ってるけど、一緒にしないで欲しいのよね。本物の悪魔が遊ぶ時は、対象の意思を認めた上で殺るっての。手間暇掛けて人形を壊しても楽しくないでしょうが。私は要らないわ。あんたがちゃんと食べれば良し」
 怪しげな物を選別したら殆どが
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