暁 〜小説投稿サイト〜
豹頭王異伝
転換
最高の軍師
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ゴール青騎士団司令官、マリウス・オーリウス伯爵。
 トーラス動乱の際、ゴーラ軍の捕虜となった幽閉者の瞳に凄絶な炎が踊る。

「アムネリス様に、男児が誕生した。
 俺が名付け親となり、ミアイル公子の継承者となって貰う心算でいる」
 下手な説得や弁明は避け、単刀直入に事実を告げる。
 感情に惑わされず、淡々と語られた言葉は真実の響きを感じさせた。

「何だと!
 アムネリス様に、男児が!?
 お前が名付け親、ミアイル公子の継承者だと?
 裏切り者イシュトヴァーンが、そんな事を許すものか!」
 新マルス伯マリウスの瞳に驚愕の色が浮かび、内心の衝撃を露呈する。

「イシュトヴァーンには、男児誕生の事実を知らせていない。
 ミアイルと名付けたのも、俺の一存だ。
 アムネリス様の自害を喰い止める為には、他の手段を思い付けなかった。
 モンゴール大公家の後継者に、とは思っているが秘密裏に事を運ばねばならん。
 お前が協力してくれなければ、どうにもならんだろうな」
 心理戦を有利に導く機会を逃さず、カメロンは一気に畳み掛けた。

 鋼鉄の強靭さを秘めた剛毅な黒い瞳、爛々と光る青い瞳が激突。
 目に見えぬ火花が散り、新マルス伯爵が叫んだ。
「頼む、アムネリス様と御子息を守ってくれ!
 モンゴールの為だ、協力する!!」

 人心収攬の練達者は無表情《ポーカー・フェイス》を貫き、冷徹な男を装っていたが。
 20代の実直な武人を更に翻弄する必要は無い、と見て破顔。
 太陽の様な微笑を見せ、無造作に鍵の束を取り出し牢屋の扉を開ける。
 するりと格子の中に足を踏み入れ、思わず後退する若者に掌を差し出す。
 クムの銀色鬼と畏怖される軍勢を破り、大公を討ち取った際の戦友と固い握手を交わした。

「感謝する、マルス伯。
 イシュトヴァーンが留守の間に、事を進めて置きたい。
 アムネリス様に会い、心を落ち着かせる一助となってくれ。
 モンゴールの騎士達を組織して、大公家の再興に備えると誓う事でな」

「そ、それは、願ったり叶ったりだが、そんな事をして、大丈夫なのか?」
「あんまり、大っぴらに動かれると困るがな。
 トーラス出身の騎士達に、クムの密偵が暗躍してないか見張らせてはいる。
 貴公の部下達にも働き掛けたいが、誰か、適任者を推薦して貰えると有難い」

「ヤヌスの戦いで殿軍の大隊を率いたダロスは、生き延びているのだろうか?
 副官を務めたドルクス、アロス、デイクスも乱戦の中ではぐれてしまった。
 黒騎士団の長官に任命された盟友アリオン、情報部隊の指揮官ダレン大佐は?
 まだ若いが俺の従兄弟、ハラス大尉も戦死していなければ力になる筈だ」

 マルス伯爵の遺児マリウスは単純と評される事もあり、朴訥な人
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ