【第1部】
【第1章】幼子世界を超える。
聞こえなくなった音。
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「はいっ」
片手で涙いっぱいの目をくしくしと擦って、柚子はもう一度男に封筒を差し出します。
『・・・なんなんだ』と言いながら渋々その封筒を受け取った男は、じっとその封筒を睨みつけると、もう一度目の前の幼子に視線を向けました。
「・・・開けろってのか?」
そう聞いた男の言葉に、柚子は『これを読んでもらったらママが迎えに来てくれる』と思っていたので
大きく頷きます。
小さくため息を吐いた男は封筒に視線を戻すと、その封筒を開け、中の手紙を取り出して無言で視線を走らせました。
その手紙を読んでいる男の表情はどんどん険しいものになっていきます。
そしてその手紙を読み直すと、封筒にもう一度手紙をおさめてマントの中へしまってしまいました。
「チッ・・・。仕方ねぇ。おい。ゆず、だったか。」
「う?ゆず、ゆずなの。」
男が自分の名前を知っていたことで、更に柚子はこの男が母親のお友達なのだと勘違いしてしまいました。
今度は大きくため息を吐いた男は、一言柚子に向かって『泣くんじゃねぇぞ。』と眉間の皺を深めてその小さな体を片手でひょいっと抱き上げたのでした。
肩腕でだっこされていた柚子は、自分の足元から先ほど聞こえたプシュっという空気音が聞こえたことに気づくと、足下に視線を向けようとしましたが、ぐいっと急に男の体に押し付けられるくらい体が引っ張られるのを感じ、次の瞬間には、先ほど見上げていたはずの大きな木が下に見えることに気づいて叫びました。
「みゃあああああっっ!!」
「っっ!うるせぇ。怖けりゃ目を閉じてろ。」
「ふぇっ。うえーーーんっっ。」
「くそっ。耳が痛ぇ・・・。」
何で俺がこんな目に・・・と、男は内心で頭を抱えるのでした。
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