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である。提督にとっては、比叡カレー、磯風ご飯に並ぶ謎物質である。
「はい、あのよく分からない物です。一応処分しておきましたが……」
「うん、まぁ、駆逐艦の子とかが欲しいと言ったら、絶対阻止してね。なんか変な進化とかしたり悪霊化したりしたら大変な事になるんで」
「はい、承知しております」
案外ありそうな事を気の抜けた貌で口にする提督相手にも、大淀は綺麗な一礼で応じる。提督はそんな大淀に苦笑を浮かべ、手に在った書類を机に置いた。
それを見ていたのか。大淀は書類が置かれた執務机、その上に置かれていたもう一つの紙面、青葉通信を眼鏡に映して提督へ顔を向けた。
「提督、青葉さんから聞いたのですが、前の号でコメントを出されたとか……?」
「うん、そうだけれども?」
それがどうした? と問う提督の目に、大淀は少しばかり躊躇したあと小さく口を動かす。
「その、今まで外との接触を絶たれていた提督が、どうして……と思いまして。至らぬ者で、申し訳ありません」
「あぁいや、引きこもってたのはただの事実だし、特に君達にも説明してなかったからね」
提督は頭をかいて、肩をすくめた。机の上に置かれた新聞へ目を落として溜息混じりに零した。
「やっぱり、いざという時に横の繋がりが欲しくなってね。今更だけど、損得勘定込みの友誼も求めてみたくなったわけだ、僕なんかでもね」
「提督……」
その提督の言葉に、大淀は深く一礼する。提督がそうする理由の一つに、自分達の事も含まれるからだと理解したからだ。流れ落ちようとする涙を隠す為、また心からの感謝の為、大淀は海軍式の敬礼ではなく、ただの女として深く一礼したのだ。
そんな大淀の心底までは見えなくとも、心の篭った礼を受けた提督は慌てた様子で口を動かし始める。
「あぁ、まぁ、それにほら、僕だって飲み友達とか、愚痴りたい同僚とか欲しいってモンで、何も全部が全部仕事で義務って訳じゃないんだ」
慌てた調子の提督が微笑ましいのか、気遣いが嬉しいのか。大淀は指で目尻に溜まった涙を拭うと、くすりと笑って頷いた。
「そうですね、提督もご友人を作られるべきです。ただ、悪い遊びを教えるような友人は、必要ではありませんが」
「うん、そうですねー」
朗らかに笑っていたはずの大淀の相が、後半辺りから何故か淀んでいった事に提督は戦々恐々と応えた。その空気を入れ替えようと、提督は特に何も考えず今後の事を口にした。
「それにまぁ、こっちで提督続けるなら、今はともかく、十年二十年もすればやっぱりお嫁さんとか欲しいし、そういうの紹介してもらう伝も、同僚とか上司から貰えたらなー、と」
この辺りが、まだ彼がこの世界に馴染んでいない甘さとも言えただろう。
大淀は提督の言葉
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