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ある初霜は瑞穂の遠征を手伝いに出ているし、秘書艦代理の大淀も開発の為席を外している。狭くも無く、広くもない。そんな執務室で一人もう一度息を吐いて、提督は目を閉じ――
ノックが執務室内に響いた。
提督はドアへ目を向け、頭をかきながら声を上げた。
「どうぞ」
「提督、ただいま戻りました」
「うん、おかえり」
提督の言葉に、普段余り見せる事もない無防備な笑みを向け大淀は頷いた。彼女は手に在る書類、大淀がサポートした妖精との開発結果が書かれたそれを、提督に差し出した。受け取った提督は、手に在る書類を見つつ、しかし考えているのは先ほど見せた大淀の笑顔だった。
――ここの子はなんだろうね、まぁ綺麗に笑うもんさなぁー。
艦娘にもよるが、提督が挨拶した際嬉しそうに笑う娘は多い。提督も男であるから、若く見目麗しい少女や乙女達の笑貌に胸動かぬ等という事は無い。凡人である提督は、美的感覚も極めて普通だ。愛らしい、と言うよりは凛々しく、清潔感をまとった美少女である大淀に胸の一つや二つ高鳴ると言うものだ。
だが、である。
――女だらけの職場で、男が一人なんだよなぁ。
女、という生き物は男の視線や情動に鋭く、敏感だ。一人の、或いは少ない職場の男が誰か一人を優遇すれば、僅かな事でそれを察知し優遇された女性を集団で避け始める。そうなると、一番不幸になるのは優遇された女性だ。
短い社会生活でも、そんなものは提督には確りと見えていた。男は上を見て格差に嫉妬するが、女は隣を見て僅差に嫉妬するのである。無論、個人差はあるだろうが、世間を見ていればよく目に入ってしまうのも事実だ。昔の偉人などはそんなさまを見て、小人と女は度し難い、と良く書き残したわけである。
提督とて、ここに居る艦娘達がそうであるとは思っていない。思いたくも無い。多くの人は近しい人には小人であって欲しくないと思っている筈だ。しかし、それでも提督が一人、二人を特に贔屓する事で誰かが不幸になる事態が起きないと証明できる物も無いのだ。絶対なんてものは絶対無い。ゆえに、提督はなるべく大淀に悟られぬよう平静を装った。
「で、今日は……あぁ、ペンギンと――あのよく分からないの」
戦闘機開発の時とは違い、大本営から命じられている一日四回の兵器開発だ。提督は気負った様子も無く能天気な相で大淀に顔を向ける。
良く分からない物、と提督は言ったが、本当に良く分からない物なのだ。綿のようであるが綿ではなく、ぬいぐるみの様でぬいぐるみではない。触ってみれば生暖かく、脈打つように蠢いていも居る。もしやと思い一時間ほど監視した際には、モルスァ、と鳴き出したので、提督も、キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!! と返した後焼却処分したの
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