26
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ふーむ」
提督は手に在る新聞――青葉通信に目を落としたまま唸った。特に意味のある唸りではない。ただ書かれている情報を頭に入れていると自然に出た物である。
この鎮守府が大きな変化を迎えたように、他の提督の鎮守府や警備府も変わってきている。特に目に見える変化といえば、やはり最近終えた特別海域の事だろう。
提督は青葉通信の末頁を読みながら、あるところで目を止めた。各青葉達の提督による近況報告、と言うよりはレス返しコーナーとなりつつあるところだ。
今提督の手に在る青葉通信の前号に、提督は初めて近況を報告した。この世界の住人となって、艦娘達の提督としてある為に、同僚達と繋がりを持つべきだと思ったからだ。社会人になれば嫌でも分かるが、横の繋がりは上下の関係とは違い切れない。切れにくい、いうべきか。上司は味方であり敵であるが、様々な事情で交代する場合がる。部下は仲間であり駒であり敵でもあるが、これも様々な理由で自身の下から去る事がある。
が、横はなかなか消えない。自身が昇進しようが、同期が昇進しようが、だ。特に十年も二十年もすれば、少なくなった同期などもう一人の自分の様にすら感じるだろう。
貴様と俺とは同期の桜、と人は歌うが、脳裏に描いてみると良い。二十年後、その桜がまだ隣で咲いているのか、散っているのか、そもそもその樹すらあるのかないのか。
同期とは、付き合い方にもよるが宝である。切磋琢磨するも、嫉妬するも、仰ぐも、隣に居た者であるからこそ一入だ。
そういった存在を、提督はここで作る決心を固めたのだ。嫌な言い方をしてしまえば、自身の鎮守府が何がしかの不都合に巻き込まれた時、手を差し伸べてくれる相手を作る事にした。当然、彼自身も手を差し伸べる立場にもなるだろうが、それもまた貸しになる。いつか返してもらうのだから、不都合は無い。
兎に角、提督はさしあたってここでのデビューを考えた。
――まぁ、だからこそちょいと斜めってみたんだけども。
主婦の公園デビューの様なものだが、どこか無遠慮に見下ろしていた世界に足を踏み込むというのは、なかなかに難しいようだ。素直に出るにはこの鎮守府は少し人の目を集めすぎた。かと言って澄まし顔で出るには上が多すぎて申し訳ない。そこで、彼は考えた。
ネタで濁そう、と。
「瑞穂のお弁当が美味しすぎて辛い」
提督は、この水母艦娘はそうそう他の提督の手元に居ない筈だと予想して少しばかり煽りつつネタに走ったのである。これに対するレスもまた、だいたい提督の予想通りだった。
「死ね。氏ねじゃなくて死ね」「そんな艦娘いないし」「やだ、あの鎮守府やっぱりこわい」「おまえのとこの戦闘機の妖精パイロット、全員ボナン副操縦士になる呪いかけたわ」「写真でいいんでお願いし
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ