25
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「で、提督って今何してるの?」
「はぁ、あたしが知るわけないでしょ」
「んー……直接執務室に行けばいいんじゃない?」
少女達はそれぞれ、勝手に口を開いて黙った。互いが互いに目をやり、ふん、と鼻を鳴らす。いや、その中に一人逃げ腰な少女が居た。阿武隈だ。
「と言うか……なんで提督の話?」
気のきつい方ではない阿武隈には、今この場に居る自分が不思議でならない。不思議でならないが、何故か納得もしている。ゆえに、彼女はここ――伊良湖の甘味処の一室から逃げはしなかった。
「んー……ほら、提督さ。執務室から出て来たっしょ、ほら、最近も宴会で」
「うん」
きつい方の片割れ、鈴谷は穏やかに笑って阿武隈に話しかけた。相手に合わせるのが鈴谷のやり方だ。阿武隈が喧嘩腰にならないかぎり、鈴谷は穏やかに笑ったままだろう。
「でさぁ……結局提督、あんま外で見かけないじゃんさ?」
「あぁー……」
鈴谷の言葉に、阿武隈は納得と何度か頷いた。確かに、鈴谷が言うその通りだからだ。部屋から出てくる提督を、多くの艦娘は目にしてない。現在も、提督に会いたければ執務室に行け、という状態だ。結局変化が無いも同然の状態である。
それが鈴谷にとって不満なのだろう。
「せっかく出られるんだからさぁ、一緒に色々行きたいと思うっしょ?」
「うん」
素直に阿武隈は頷き、一人ぱくぱくとみたらし団子を食べているもう一人のきつい方……霞を見た。その目が、霞の目とぶつかった。霞はハンカチで口元を拭うと、おもむろに口を動かした。
「じゃあ言いに行けばいいでしょう? ここで愚痴って何になるの?」
「わかってなーい。わかってないなー霞は」
鈴谷は一転、相を険しくして霞を睨んだ。攻撃的な思惟が見えるその相に、向けられた訳でもないのに阿武隈は上半身を仰け反らせた。そんな阿武隈を気にもせず、鈴谷と霞は口を動かす。
「そういうのって、提督に言わせるのが一人前ってもんでしょ?」
「じゃあ言わせて見なさいよ」
「っかー、もー、っかー……霞は駄目、もう駄目。全然分かってない」
「はぁ? あんた日本語大分怪しいわよ?」
「艦が女の形になるなら、言葉だって空飛んで海潜って陸走って三体合体六変化くらいするっしょ?」
「駄目だわ、あたしあんたの言葉がまったくわからない……」
額に手を当てて俯く霞の相は、冗談ではなく本気で苦しそうだ。対して鈴谷は、実に涼しげである。鈴谷は自身が頼んだミックスジュースのストローに口を寄せ、吸った。喋って喉が渇いたのかもしれない。が、阿武隈は尚更喉が渇きそうだ、と思って目を逸らした。阿武隈は、こほん、と咳を吐いて二人の視線を自身に誘導してから、
「まぁ、出てこない、から出てくる、になったん
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ