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執務室の新人提督
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だから、ここからどう攻めるかよね?」

 そう言った。その阿武隈の言葉に、霞と鈴谷はテーブルに身を乗り出し同時に言った。

「それ!」






 偶々、本当に偶然三人は廊下ですれ違い、何故か三人で甘味処へ来る事になった。何故、どうして、と思いはするが、どこか本能的な部分が恣意的に動いていた。当人達の意識を無視して。
 ただ、こうやって話をしてみると、なるほどとも彼女達は思った。
 
「誰か、何か案は?」
「もう一回宴会やろうって話があるけど、金剛にやられた提督が釣られるかなぁ?」
「あれはもう金剛も反省してるし、掘り返しちゃわるいって」

 つまり、三人とも現状に満足していなかったのだ。
 折角執務室から出てくるようになったのだ。ならもっと提督に色々と見てもらいたいこと、一緒に見たいものがある。それはこの三人に限らず思うことであったが、ここに居る三人娘はいざと言う時直ぐ動ける為に下地――作戦を用意しておきたかったのである。
 
「無難にいけば、暇しているだろう時間にお邪魔して、工廠とか港に誘い出す……かなぁ?」
「いやむりっしょ。それ人通り多いから見られて協定違反って言われない?」
「じゃあ、どこか人通りの少ないところへ連れ込めばいいのね?」

 霞の言葉に、鈴谷と阿武隈は目を合わせた。そのまま、二人して顔を真っ赤にして霞を睨む。その二人の相によからぬ物を感じた霞は、暫し考え込み……はっと顔を上げてこちらも同じように相を真っ赤に染めて口を大きく動かした。
 
「ば、ばか! ばかばか! あ、あたしからそんな事しないわよ! 馬鹿じゃないの!?」
「あぁ、されるのはいいんだー」
「迫られるのはありなんスかー霞さーん」

 結果、霞のそれは鈴谷と阿武隈を煽っただけで終わった。霞は涙目で残っていたみたらし団子を口へ運び、二人を睨みつける。涙目の相に常に迫力などかけらも無く、鈴谷と阿武隈は流石にやり過ぎたかと苦笑を浮かべた。
 
「じゃー、和んだところで再開といきましょー」
「ですねー」
「あんたらいつかぶっとばす」

 決して室内の空気は和んではないが、阿武隈と鈴谷は気付かぬ振りで払拭に取り掛かった。
 
「結局、誰にも気付かれずに提督を自分の陣地に運ぶってのが大事な訳っしょー……」
「いや、そんなの無理じゃない?」
「あはははは、だよねー」

 と話していた三人のうち、突如鈴谷と霞が真剣な相で阿武隈を見つめた。
 
「え、え……な、なぁに?」

 真剣な相、と言うよりはもう親の仇を見る様な二人の双眸に、阿武隈は逃げ腰だ。が、それを許さぬものが居た。鈴谷だ。彼女は一瞬で阿武隈の肩をつかみ、真正面から阿武隈の目を覗き込んで呟く。
 
「抜け駆け……しないよね……?」

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