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執務室の新人提督
それから
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金剛の傍に、恐ろしい速さで神通が現れた。当然山城が言ったそれを手にしてだ。速攻で取りにいったのか、山城が言う前から用意して隙さえあれば金剛の口に放り込むつもりだったのか、それは誰にも分からない。
 多分後者で間違いないし確定だが誰も怖くて目を合わせられないからだ。こうやって多くの真実は闇の中へ埋もれていくのである。
 普段なら神通の出現に、比叡カレーを前にした金剛の如くぶるぶると震えだす山城も、こういう場面では心強いと感じたのだろう、力強く頷いて口を開いた。
 
「主砲……よく狙って、てー!!」
「いや、それは流石にちょっと――」
「比叡カレーも次発装填済です……これからです!」
「おかわりあるんデスかー!?」

 開始早々、宴会はもう駄目な方向に向かっていた。
 
 その後、結局腰を痛めた提督は山城と共に執務室へと逆戻り、金剛は比叡カレー×2によって大破着底したあとバケツで帰還、そのまま自棄酒に入った。この鎮守府の先行きを不安にさせる気まずい滑り出しであった。
 
 が、今夜がそうなってしまっただけだ、と多くの艦娘達は笑い飛ばした。今まで半月、いや、彼女達からすれば提督が彼女達の提督になってから今まで、長い時間制限されていた様々な事が解除されたのだ。
 実際、今回の宴会で料理を作ったメンバーなどは、前向きだ。

「まだ材料に余裕もありますし、明日が無理でも明後日か明々後日辺りにまたやりましょうか?」
「そうですねぇ……今度は提督へのおさわりは禁止、という項目込みですね」
「あ、あははははー」
「提督に、卵焼き食べて貰えなかった……」
「大変そうですね……提督……」

 鳳翔、間宮、伊良湖、瑞鳳、瑞穂が口にした内容を耳にした霞は、まぁ仕方ないわよね、と特に否定もせずまた次のテーブルに目を移した。
 霞が目を向けたその先では、青葉が衣笠に抱きついて馬鹿笑いを上げていた。
 普段、抑えた笑顔を浮かべるだけの青葉にしては、相当珍しい顔である。が、今回ばかりはこれも仕方ない事であった。少なくとも、霞は共感できていた。
 
「で、そこでですねー、提督がばーって出てきましてー……んで、がーって声を上げてですね」
「うんうん、衣笠さんそれもう何回も聞いたんだけどね、青葉ー」

 青葉は自分が目にしたこと、耳にした事を真っ赤な顔でアルコールによって乱れた怪しい調子のまま、時には身振り手振りを交えて話していく。
 
「あぁもう、あぁもう悔しいなー、青葉もうすごいくやしいなー! なんであの時青葉はていとくをカメラでとっておかなかったんですかもー」

 あの時、と言うのが霞には判然と出来ないが、凡その事は分かる。というよりも、あの時間鎮守府に居た事務方、または待機中、もしくは休日を楽しんでいた艦娘は全員耳にした。

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