それから
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もより動かないとお肉つくなわね、これ、と考えながら口を動かし、霞は特に何も考えずに再びを周囲を見始めた。ただし、今度はゆっくりとだ。
べろべろになった金剛を見て、霞は今夜の宴の、その一番最初を思い出した。
「えー……」
何故か食堂に置かれていた小さな台に乗って、提督が目を泳がせながら口を動かしていた。
「あー……」
言葉になっていない、一文字を伸ばすだけの簡単なお仕事中の提督を、そこに居並ぶ艦娘達はただ静かに、ただ見つめていた。背を正し、顔をあげ、歯を食いしばり、彼女達は全神経を耳と目に集中させていた。その相がまた、提督に一文字を伸ばして口にするだけの簡単なお仕事をさせる。
「んー……その、なんだ」
やっと言葉を出す事に成功した提督の口は、そのまま動いていく。ただし、この時提督はもう目を閉じていた。視界に飛び込んでくる真剣な相の艦娘達が怖かったからである。
「長く、待たせたみたいだけれどもー……今日から、まぁ、なんだ。提督を頑張ってみたい、と思っている、かなーっと」
提督の締まらない言葉も、艦娘達は誰も笑わない。悲願、念願、そういった物が、ただそこに立って喋っているだけの提督に詰まっているからだ。
食堂に、立っている、ただそれだけの提督に。
「じゃ、じゃあ……かんぱい?」
提督はその言葉で小さな台から降りて後ろに控えていた山城に笑顔を向けた。山城はそれに、仕方がない人だ、といった相で応えようとしたが、出来なかった。提督が山城の視界から消えたからだ。
山城は目を瞬かせつつ周囲を慌てて見回し、耳を打つ奇矯な声に気付いた。その声が発せられる足元に目を向け、彼女は眉を顰めた。
「へ、へへへへヘーイ提督! ヘーイ! ヘヘヘヘーイ!! ヘヘヘヘーイてぇいぃいいいいいいとくぅう!」
提督の腰辺りにしがみつき、倒れこんだ提督の体に一生懸命頬を擦り付け瞳にハートを映したなんかきめてるんじゃないかと疑いたくなる大分言語中枢がぶっ飛んだ感じの金剛がいた。そしてそんな金剛にタックルを決められ宴会開始早々死に掛けている提督もいた。
山城は暫しそれを無言で眺めてから、はっと我に返り金剛を引き離しに掛かった。
「金剛……! 金剛、気持ちは一応理解できるけれど、今は離れてください!」
「山城! 後生、後生ネー! あと五分提督分を摂取できたら私もっとやって行ける感じがめっちゃするけんだはんでちくとまってつかぁさいネー!!」
もうどこ生まれの何人であるかも分からない金剛を、一人では提督から剥ぎ取れないと確信した山城は周囲にいる艦娘達に声をかけた。
「比叡カレー、装填用意!!」
「え、ちょ」
「はい!!」
何やらびくりと震えた
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