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―それに、疲れたときには甘い物、ですからね。
チョコを少々、飴も少々。それらを籠にいれ、大淀は提督の疲れていた顔と、廊下で会った少女達の姿を思い出し小さく笑った。
――確かに、五人も相手にすれば疲れますよね。それが最初の五人なら、なお更ですか。
大淀があの時すれ違ったのは、吹雪、叢雲、漣、電、五月雨である。タイプはそれぞれ違うが彼女達は仲睦まじく、そんな五人を相手に立ち回らなければならなかった提督は
――相当に大変だったでしょう。まして吹雪は提督の初期艦ですからね。
吹雪は正真正銘、提督にとって初めての艦娘だ。古い相棒相手に、あの提督が甘くないわけが無い。
大淀は苦笑を浮かべて頷き、徐々に瞳を揺らし始めた。違和感がある。大淀の中に大きな違和感が、今になって生まれた。
――この鎮守府の初期秘書艦は、初霜で……初霜が初期秘書艦?
前例は無い。だが、大淀の記憶ではそれに不都合はなんらない。初霜は多くの時間執務室に居た、提督自身が選んだ秘書艦だ。
――提督が着任した時、私はあの人が無責任の塊で、作戦行動の失敗は全部艦娘に擦り付けるつもりではないかと疑っていた……それはいつ?
大本営からここに配属されたその日ではないかと大淀は考えたが、それが上手く彼女の中で繋がらない。まるで彼女の中に別の彼女が居るような、妙な重さがある。
首を横に振り、大淀は大きく息を吸った。眼鏡を外し、レンズをクリーナーで磨く。そしてまた眼鏡をかけなおし、人差し指で額を何度も叩いた。
――私があの人と初めて出会ったのは? 初めてあの人の為に海上に出たのは?
任務娘と呼ばれ、提督に任務を伝えるだけだった頃が彼女の脳裏を過ぎる。ついで、いつ頃かの特別海域クリア後辺りから、大淀、と提督に呼ばれ始めたのも確りと彼女の中で再生された。第一艦隊の旗艦をまかされ様々な海を駆け、様々な仲間と共に駆けたことも、明確に心にあった。提督の大淀としての記憶は鮮明だ。
大淀に良く似た暗い瞳を持つ何かが、大淀の首を絞めようと手を伸ばす。そんな何かを脳内で幻視しながら、大淀は強く頭を横に振った。
――私が"ここで初めて"出会ったのは?
提督が着任した時、大淀と提督は言葉を交わしている。ただ、それはノイズ交じりの映像で、大本営の大淀の記憶は不鮮明だ。大淀の中で、繋がらない、結ばない、噛み合わない記憶と情報が交差する。まるで二人の違う大淀が、どちらが正しくこの世界の住人であるかの主導権を奪い合うような、そんな滑稽な争いが大淀の中で起きている。頭痛の余り俯いた大淀は、籠の中にある物を見て目を見開いた。
――は、はははは。
声には出さず、腹の中で大淀は笑う。
たったそれだけ。ただ目
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