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た視線を戻した。
「お疲れ様です」
心底から、大淀はそういった。女三人寄れば姦しい、と昔からいうがプラス二人の五人である。それも年頃の少女達が、このそこまで広くも無い執務室に集まって、だ。たった一人の男である提督がどれほどの居心地の悪さの中で時間をすごしたか、大淀には想像に難くなかった。おまけに、室内の様子を見るにゲーム機類も出ていない。これは提督が自身のフィールドに相手を引き込めず、自身の領地でありながらアウェイのなか孤軍奮闘していたことを示唆していた。
要するに、お茶も濁せず若い少女達の無軌道なお喋りに提督は翻弄されたという事だ。ましてやこの提督、人類インドア派の代表で金メダル候補だ。花咲く前の蕾の様な少女達を捌き切れるようなスキルを持っているわけが無い。
大淀はそこまで断定してから、書類を提督に渡そうとして――提督の机、執務机に置かれている物に気付いた。
大盛りのカップラーメンだ。
「まだ食べていなかったのですか?」
「食べようとしたら、ノックがあってねぇ」
「……申し訳ありません」
「いや、さっきの五人娘の方」
浅く頭を下げた大淀の向こう、テーブルに置かれた様々な菓子を瞳に映して、提督は肩をすくめた。
「でも、多分また暫く食べないかな……。なんというか、色々増えたし、カップラーメンは今のところこれ一個だし」
菓子はここに来た艦娘達がそれぞれ補充していくが、提督の手元にあるカップラーメンはこれ一つだけだ。レア度が高くなると倉庫に仕舞いがちになるのは、仕方がない事でもある。
そんな提督に、大淀は
「もう一つ買ってきましょうか?」
そう言った。酒保で買ってくる程度であれば、大淀にしても自身の買い物のついでに済ませるからだ。が、提督は大淀の言葉に首を横に振る。
「貰ってばかりってのは、これでなかなかどうして……ねぇ?」
大淀は、座ったままばつの悪い顔で自身を見上げる提督の言葉に、頬を膨らませた。それは大淀が意識した物ではなく、ただ自然と行ってしまった大淀の感情の発露だった。
「執務室に篭っている時点で相当に甘えているんです。もっと甘えても良いのではないですか?」「でもね夕雲さん?」
「大淀です」
確かに、どことなく夕雲型姉妹の長女を思わせる言葉で在ったかもしれない、と自省しつつも大淀は腰に手を当て身をかがめる。
「唯でさえ提督はコミュニケーション不足が目立つのですから、もう少し私達と接してください。それも提督の仕事の一つなんですから。良いですね?」
「あ、はい」
近くなった大淀から距離をとるように、提督は身を捩じらせていた。その提督の姿にため息を吐き、大淀は背を真っ直ぐに正した。
提督は自身に向けられた大淀の呆れを
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