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一昨日、昨日、それらの報告書に目を通した後、提督は首を横に振った。戦闘機開発を任せた加賀からの報告は提督にとって納得の行く物ではなく、その感情が彼の首を横に振らせたのだ。
――そりゃあまぁ、一日の開発回数が決められてる上に、狙い撃ちの開発レシピも絶対じゃないからなぁー。
出来上がってしまった九九式艦爆等は、不本意だがばらしてしまうしかない。保有戦力には限りがあり、かつてあった上限拡張方法も今の提督では出来そうにないからだ。
――魔法のカードなぁ。
持っていないわけではないが、明石の酒保には買えたはずの"あれら"を扱っている様子もない。ここに来てしまった混乱期の、一週間目のいつ頃かに提督は初霜へ購入を命じたが、そう言った物はないとはっきり明言されてしまっている。
――まぁ、こつこつやるか。
ここでのルールがあるなら、提督はそれに従うしかない。例えそれが不本意であっても、納得がいかないものであっても、存在する自我を彼自身が否定する訳にはいかない。
提督は執務室の扉へ目を移し、ため息をついた。と、そのため息が終わると同時にドアがノックされる。控えめでも、特徴的なドアノックでもない。
さて誰だ、と思いながら提督は壁にある時計を一瞥し、口元に苦笑を浮かべた。
――あぁ、もう昼時か。
「開いてるよ、どうぞー」
提督の許可にドアはゆっくりと開かれ、ノックをした当人の顔が現れた。
「おはようございます、提督」
「おはよう、アイ……明石さん」
他の鎮守府等ではいざ知らず、ここでの最初に出会ったときの挨拶は、おはようございます、と決まっている。互いに挨拶を交わした後、明石は提督に眉の角度を少しばかり上げた。
「提督……また私の事アイテム屋さんって言おうとしてましたね?」
「ごめんごめん、どうにもねー……これはなかなかに手強い癖でねぇー……」
すまなそうな顔で頭をかき出したこの提督には、どうにも直らない癖がある。人間20を越えて残った癖はなかなか直らないというが、20を越えてついた癖もなかなかに頑固にこびりつく。どうやら提督もそうらしく、明石をアイテム屋と呼んでしまう癖が頑固にへばりついていた。
「確かに酒保とか預かっていますけど、なんか酷いあだなですよ、それ」
「いや、申し訳ない」
部下に軽々しく頭を下げる提督に、明石は、大淀や初霜も大変だろうなぁこれは、と考えながらも持って来た荷物を来客用のテーブルに広げ始めた。
「ほらほら、提督もこっちに来て下さい。ご飯ですよ、ごはんー。大淀と夕張と私の愛情弁当ですよー」
「あぁ、美味しそうだね」
苦笑の相でさらりと流す提督に、明石はいつも通りに戻ったと喜ぶべきか、流石提督だと感心す
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